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子供のセカイ。181

[454]  アンヌ  2010-07-04投稿
地下へ入ると、天井にぼんやりと明かりが灯るようになった。松明ではない。それ自体が発光している謎の球体で、石でできた通路をより硬質に見せるような、弱い光を放っていた。
時折、ずらりと並んだひしゃげたドアの向こうから、何かが呻く低い声が漏れ聞こえた。ドスン、ドスンと壁を殴るような音、鎖をじゃらじゃらと鳴らす音も響いてくる。
その度に王子は、手に持った猫の紐を強く握り締め、臆病風に吹かれそうになる自分を叱咤した。元来穏やかな性質を持つ彼には、黴た臭いや殺伐とした空気自体、恐ろしく思えたのだった。
地下七階くらいに来ただろうか。その通路の壁にドアはなく、鉱山に拓かれた洞穴のような道が一本、くねくねと伸びていた。ルキは確かな足取りで進んで行く。やがて少し開けた場所へ出て、目の前に突然巨大な鉄の門扉が現れた。白い光を放つ球体が、扉の周りにより多く集まり、その存在を目立たせている。
王子とジーナは、ルキの手で扉の前に押しやられた。王子は当惑して扉を見上げ、ジーナは逆に油断なく治安部隊の方に向き直った。
ルキは暗がりにぞろぞろと居並んだ、十数人の治安部隊の若者達を振り返った。
「そろそろいいな。ユジユ、こいつらに剣を返してやれ。」
「おー。」
間延びした声が答え、治安部隊の若者達の中でも比較的身長の低い、坊主頭の男が光の中へ進み出た。身長は低いが、がっしりしたたくましい体つきは他の青年達と変わらない。
ユジユ、と呼ばれたその青年は、どこかぼんやりした目つきで二人に近寄った。背中には交差させるように二本の長剣が、腰には数種類の短剣が吊られていた。
ルキは王子とジーナに両手を真っ直ぐ前へ出すように指示すると、手刀で拘束していた縄を断ち切った。手首をさすっているジーナに、ユジユは無造作に束ねた大小の剣の柄を差し向け、ジーナはそれらを神妙な顔つきで受け取った。
「さぁて、ここからがお楽しみだ!」
突然、治安部隊の誰かがおどけたような声で叫んで、集団の中に小さな笑いが起こった。ルキも片眉を下げて笑っている。
猫は守るように王子の脇に立ち、背中の毛を逆立たせ、警戒の唸り声を上げる。受け取った剣を固い動作で腰に納めた王子は、嫌な予感を隠し切れず、すがるようにジーナを見た。素早くいつもの配置に武器をしまい込んだジーナは、眉間に深いしわを刻んで、鋭く青年達を睨み回した。

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