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帰ってくれ 5

[576]  デフレーター  2010-07-04投稿
「お兄ちゃん…?」
綾香は麻友美と亮平の顔を交互に見比べた。
そして考え抜いた末、口を開いた。
「似てない。」
「いや、ほんとだし。」
「…あんた、亮平の何なの?」
「うーん…大事な人…かな。」
麻友美がぽつりとつぶやく。亮平は慌てた。
「お前…何言ってんだよ!」
「大事な人…?」
間違ってはいないが、この状況で絶対に言ってはいけない一言。
「そうです。お兄ちゃんは、大事な人です。」
「気安く「お兄ちゃん」とか呼んでんじゃないわよ!」
「だってお兄ちゃんだし…」
亮平は頭を抱えた。
予想してた事態が起こってしまった。
わざわざ誤解を招く言い方をする麻友美となかなか信じない綾香。
「そんなこと言って…浮気してるんでしょ!?…亮平も最低…」
「だから麻友美はほんとに妹なんだって…」
「そうです!大事なお兄ちゃんなんです!」
「だから!そういう言い方するからややこしくなるんだって!」
「なんで?ほんとのことじゃん。」
初めて麻友美のことを本気で憎くなった。
綾香は今にも殴り掛かりそうな目で兄妹を見る。
「事態悪化させてどうすんだよ…」
「ほんとに兄妹なら…証拠見せてよ!」
「証拠って…」
「ありますよー。」
麻友美はそういうとバッグから写真を出した。
3年前に家族で沖縄に行った時の写真だ。
「麻友美…これ持ち歩いてたの?」
「へっへー。こういうときのためにね。」
「滅多にあることでもないけどな。」
亮平は初めて麻友美に救われた気持ちになった。
綾香は写真をまじまじと見つめ、口を開いた。
「なんだー。妹だったの?最初から言ってくれればよかったのにー」
…こいつもバカか…
「最初からそう言ったじゃん。妹だって。」
「私、亮平の彼女の綾香って言います。よろしくね。」
「麻友美です。よろしく。」
互いに握手する綾香と麻友美。
やれやれ…やっと一段落か…
亮平は疲れきってしまった。



続く

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