欲望という名のゲーム?42
パッとテーブルの上のテレビが明るくなり、昨夜と同じように雅則がテーブルについた。
「やぁ諸君。
今夜も食後の挨拶に来たよ」
テレビの中の雅則が、軽い感じで話しだす。
「どうかね。
今日一日で、何か手掛かりを掴んだ者はいるかな?
それともまだ、暗中模索の段階かな?
それでは暗中模索の方々へ、本日のヒントを出そう。
三階の六号室。
そう、あのチェスの駒が置いてある部屋だよ。
あそこには行ってみたかね?
あの部屋には、私の自慢のチェスセットが一組あるのだが、もう見てくれたかな?
小さい水晶のチェスセットだよ。
見た者なら分かると思うが、あのセットには白のクイーンが無かっただろ。
そのはずさ。
私が隠したのだからね。
諸君達が始めに出会う手掛かりは、この白のクイーンのはずだ。
いきなり本来の目的地に到達する事は不可能なのだよ。
この隠された白のクイーンが第一チェックポイントであり、そして折り返し地点でもあるのだ。
だからまず、この白のクイーンを探すことに、全力を上げてもらいたい。
そのためのヒントは、すでに昨夜出揃っているはずだ。
そして私は声を大にして、こう言おう!
『捕らわれのクイーンを救い出し、正しき位置に導け。
されば扉は開かれん!』
とね。
…あっ、そうそう、追伸があるよ。
何か分からない事があったら、この屋敷にある本を自由に活用してくれたまえ。
宝探しに必要な知識は、全部揃っているはずだ。
だが膨大な本の数だからね。
何が必要なのかは、自分で考えてくれたまえ。
では諸君、また明晩会うとしよう」
雅則の姿が消え、画面は無意味な雑音になった。
鹿島がスイッチを切る。
「やっぱり兄貴が隠したのか」
明彦がいまいましそうに言った。
「ねぇ、これだけなの?」
友子が鹿島に聞くと、彼はうなずく。
「ちょっと、これだけじゃ、昨日とたいして状況が変わらないじゃない」
「妻の言う通りだ。
これじゃ、なんのヒントにもならない。
あとテープは何本残ってるんだ?」
「残りのテープは、あと三本ございます。
毎晩一本づつお見せする事になっております」
「それを今、全部見せてもらいたい」
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