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欲望という名のゲーム?43

[384]  矢口 沙緒  2010-07-07投稿



「お断りいたします。
テープは毎晩一本づつ順序通りにお見せせよと、雅則様から指示をいただいています。
それを無視するわけにはまいりません」
「ケチなこと言ってないで見せろ!」
明彦が立ち上がって叫んだ。
それに続いて、深雪と友子も騒ぎ出す。
しかし、鹿島は頑として断り続ける。
やがて、見せろ、見せないの押し問答になってしまった。
どちらも後には引かず、だんだんと声を荒立てる。
牧野夫妻までが、何事かと出て来た。
あの大人しい喜久雄までが、大声で鹿島を罵っている。
二百八十億円の魔力が人の理性を失わせ、入れ代わりに欲という名の怪物が、狂った叫び声を上げている。
もはや事態は、収拾のつかない状態になってしまった。

チャリーン!
突然、金属的な音が響いた。
一同はピタリと言葉を止めて、音のした方を見た。
孝子だった。
彼女が高い位置から皿の上に、スプーンを落とした音だった。
「ああ、美味しかった」
澄ました顔でそう言い、ナプキンで口を拭きながら、
「ところで鹿島さん。
雅則兄さんはゲームやワインも好きだったけど、絵画にも興味があったんじゃないかしら?」
と、言った。
「何を訳の分からない事を…」
明彦がそう言うのを、鹿島が割って入った。
困り果てていた鹿島は、孝子の言い出した事に飛び付いた。
「おっしゃる通りです。
雅則様は絵画にも大変関心を持っておられました」
「だと思ったわ。
だって、屋敷の至る所に絵が飾ってあるんだもん。
この食堂のあの絵は、本物のユトリロよ。
こっちの絵は、いかにも兄さんらしいわ。
デュシャンの『チェスをする人たちの肖像』。
ただしこの『チェスをする人たちの肖像』は模写ね。
だって本物はフィラデルフィア美術館にあるんだから。
それにね、図書室にも絵の本がたくさんあったわ」
「今、それが重要なのか?」
すでに落ち着きを取り戻していた喜久雄が聞いた。
「私の単なる思いつきだから、重要かどうかは分からないけど、あの三毛猫のパブロちゃんの名前ね、あれもしかしたら『パブロ・ルイス・ピカソ』から取ったのかもしれないって、そう思って…」
「あの画家のピカソか?」
明彦の問いに、孝子がうなずく。

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