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マイホーム 4

[719]  デフレーター  2010-07-07投稿
廊下が蛇のようにうねりながらどこまでも延長される。
壁が生まれ、木が生えるようにドアが発生する。
家は、まるで生き物のように成長を続けていた。
立っていると激しい目眩に襲われる。
義之もようやく理解した。この家で家族が体験した出来事を。
「どういうことだ…」
「逃げましょう!」
「お母さん!」
背を向けてドアを開けようとする小夜子に子供達が声をあげる。
「え?…いやぁぁぁ!」
小夜子はその場に崩れ落ちた。
さっきまでそこにあった玄関がない。
どこまでも続く、暗く長い廊下。
その先は闇に包まれている。
向こうまで行ったならば、もう戻れないだろう。
「くっ…とにかく走るぞ。」
「え…」
「無尽蔵に成長するわけではないだろう。走って…出口を探すんだ。」
「うん…お母さん、大丈夫!?」
小夜子は翼と未来に支えられ、起き上がった。
「聞こえたの…この家がケラケラ笑ってるのが…」
その時、凄まじい稲光とともに雷鳴が轟いた。
「きゃあ!」
顔を手で覆う未来を、翼が抱きしめる。
「行くぞ。」
義之は走り出した。
「あ、待ってよ!はぐれちゃう!」
走りながら、義之は考えた。
これが大家の言おうとしてたことなのか…
だからなかなか売ろうとしなかったのか…
だったら何故最初から教えてくれなかったんだ…
くそっ…必ず脱出して…訴えてやる…
その間にも家は不気味にくねりながら成長し続ける。
柱が、扉らしきものがいくつも出現する。
悪夢の中にいるようだった。
窓の外は漆黒の闇。
荒れ狂う海の波音に、轟く雷鳴。
「まだ…着かないの?」
陸上部で長距離選手の翼が息をきらして走っている。
「怖いよぉ…」
翼の手にしがみつくようにしながら未来が続く。
「もう少し…もう少しだ。」
義之は走りながら、ふと気づいた。小夜子がいない…
「…お母さんはどうした?」
「え…?」
3人は立ち止まった。
「お母さーん!」
強烈な目眩に耐えながら叫ぶが、返事がない。
あるのはどこまでも続く漆黒の闇。
激しい雨音と雷鳴が静寂を切り裂く。
3人の表情はとてつもない恐怖に強張っていた。


続く

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