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マイホーム 5

[722]  デフレーター  2010-07-07投稿
「まさか…途中で迷ったんじゃ…」
翼は慌てて引き返そうとする。
「行くな!」
義之は翼を止めた。
「でも!」
「もう少しで出口のはずだ…出たら…助けを呼んでお母さんを助けだそう。」
義之はそう言って翼の肩を叩くと、また走り出した。
翼も再び未来の手を取って走り出す。
走っても走っても、一向に出口が見えない。
もう1時間も走っている。
義之は時々自分が何故走っているのか分からなくなったが、立ち止まるわけにはいかなかった。
その時…
「きゃあ!」
「未来!」
未来が力尽き、転んだ。翼が慌てて側にしゃがみ込む。
「大丈夫か?おんぶしてあげようか?」
「私のことはいいから…早く走って…」
「でも」
「大丈夫…すぐ追いつくから…」
未来は立ち上がろうとしたが、すぐ崩れ落ちた。
「未来!」
「だめ…みたい…私、足引っ張っちゃうから…お兄ちゃん、早く…」
未来は目を閉じると、そのまま昏倒してしまった。
「くそっ!」
翼は涙を拭いて立ち上がると、一気に駆け出した。
未来…絶対助けるからな…

義之は夢中で走っていたせいで、子供達に起こったことに気づかなかった。
「義之…?」
走りながら叫ぶが返事がない。
「まさか…」
子供達をも見放して逃げるか…
義之は迷った。
しかし…ここまでかなりの距離を走ってしまった。
引き返せばすぐに力尽きる。
義之は前に進むことにした。

翼はとにかく急いだ。
足はすでに棒のようになっていたが、力の限り走った。
この地獄を抜け出して、お母さんと未来を助けて、
新しい家で幸せに暮らす。
そのために
全力で走った。
その横で
次々に発生する廊下や扉。
あろうことか、翼は急にトイレに行きたくなった。
「くそ…なんでこんな時に」
翼は我慢しきれず、扉の一つを開けて急いで用を足し、再び元の道に戻ろうとした。
「うわぁぁぁ!?」
そこにあったのはさっきまで走っていた廊下ではなかった。
床一面、壁にまで蔓草が巡らされた空間。
蔓草は不気味な音を立てながら伸びつづける。
空間そのものもぐにゃぐにゃと曲がっている。
翼はその場で気を失ってしまった。


続く

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