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あの人への追悼 〜1〜

[580]  ヤルンヴィドの番犬  2010-07-09投稿


最初のきっかけは、
俺がアクセサリー屋の
店長をしていた時。

有線で流れた一曲です。

別に感動した訳ではなく、
やたら漂うはかなさ、
暗さがひっかかりました。

『青い鳥』

というその曲は、
ビートルズの一曲を
かい摘まんだような
暗さと共に、けだるさと
鬱屈さの中に、
唸るような青春感と
意思を感じる、
オリジナリティも
きちんとある曲でした。

俺はスタッフと、

『暗いな、コレ。
誰の曲?』

『…さぁ…』

くらいのやりとりをし、
それから気になって
調べて、そのバンドを
知りました。

何でも、邦楽好きが
注目するバンドらしく、
少々のマイナーさが
ある感じ。

へぇ…

くらいで終わりでした。





それから俺は
心の病を患い、しばらく
記憶があるのかないのか
分からない生活が
続きました。


その時、ふとまた
そのバンドの曲を
聞きました。

『陽炎』

というピアノの旋律が
美しい曲。
それくらいしか
覚えていません。

『あぁ、頑張ってるんだな…。
俺はもう無理そうだ』

それくらいの印象でした。











月日は流れ、
俺は立ち直りました。
結構時間はかかりましたが。

よきパートナーにも
恵まれ、結婚し、二人で
新生活に乗り出しました。

新居の、ケーブルテレビチャンネルで、
再び俺は出会います。
あのバンドに。


『SUGAR!!』


という曲は、
アップテンポで
聞きやすく、
キーボードの耳に
残るフレーズと、
PVの女の子の
変な踊り。

やられました。

『全力で走れ』

という歌詞が、
俺に突き刺さりました。

そうか。

全力で走っていたんだ。
俺も、このバンドも。

そう勝手に感じました。

踊りを真似るパートナーに笑いながら、
こいつらは、きっと
これからもいい曲を
書くだろう。
歌うだろう。

と、安心しました。




その気持ちが、
あと十ヶ月くらいで、
変わってしまうとは
考えもせず。



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