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携帯小説家・Dの苦悩 2

[556]  デフレーター  2010-07-10投稿
入ってきたのはDと同い年くらいのまだ若い男だ。
短い茶髪に赤ブチのメガネ。
見た感じなかなかのインテリだ。
男は部屋に入ると眠っているDに近づき、肩を叩いた。
「起きろ。風邪ひくぞ」
「うわ!」
Dは飛び起き、ゆっくり目の焦点を合わせた。
「渉か…」
「お前また携帯小説書いてんの?」
男の名前は平山渉。Dとは中学・高校の同級生で、今でもたまにDの家に遊びにくる。
渉はDの手に握られた携帯の画面を見た。
「何も書いてないじゃん。」
「全然浮かばねぇんだよ…考えまくってたら疲れちまって…」
Dはあくびをしながら大きく伸びをした。
「ふーん…」
「!…お前、どうやって入ってきた?」
Dは今更気づいて慌てる。
「鍵開いてたからさ。」
渉がさらっと言った。Dはまるで泥棒を見るような目で渉を睨み、部屋中を漁り始めた。
「何も盗ってねーよ。」
「鍵開いてたからって勝手に入ってくんなよ。」
「鍵かけときゃいいじゃん。」
「確かに。」
「考え直すの早いな。」
「そんなことより、何しに来たんだ?」
「別に…暇だから来た。」
渉はDのベッドに乗っかってあぐらをかいた。
「そっか。俺、小説行き詰まってっから、邪魔すんなよ。」
「へいへい。」
Dはまた画面を睨んで悩み始めた。
「どうだ?いいの書けそうか?ん?」
渉が楽しげに聞いてくる。
「お前の小説傑作だらけだもんなー。あー楽しみだ。」
「うっさいなー…集中できねぇだろ。」
「ってかさ…今度どういうの書こうとしてんの?」
渉はベッドから立ち上がってDの携帯を覗きこんだ。
渉はDの小説を全て読んでおり、毎回いい評価をしてくれている。
「夏だからホラーでも書こうと思ってんだけどさ…」
「また?」
Dがアイデアに詰まる前の最後の作品がホラーだった。
怖さと非現実性に重点を置いた力作だ。
だがさすがにホラー2本立ては難しかったか。
「お前、こないだの作品でホラーネタ尽きたんじゃん?」
「でも絶対ホラー書きたいんだよ。」
Dの目は真剣そのものだ。
「ネタのあては?」
「ない。」
「そんな自信たっぷりに言うなよ。」
「渉ー…何かない?こう…怖がらせるような何か。」
「んなこと言われてもなー…」
渉はDの無茶振りに頭をかいた


続く

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