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携帯小説家・Dの苦悩 3

[575]  デフレーター  2010-07-11投稿
「ホラーってさ…何かありふれちゃってんじゃん。ネタ的に。」
「まあねー…」
「それにさ…お前こないだ書いたホラー…あれ、限界か?」
渉は見透かしたように言った。
「正直…あれが全力。」
「じゃあだめだな。」
「えー…あれ結構怖くなかった?」
「いや、別に。」
「はあ!?」
渉のさらりとした返事に、Dは思わず叫ぶ。
「何かイマイチ中途半端なんだよな。ストーリーも怖さも。」
今まで自分の作品を評価してくれていると思っていただけに、Dのショックは大きかった。
「あれがお前の限界なら、先はないな。」
「うーん…じゃあやっぱコメディかな…」
再び液晶と睨めっこする。
「あのさ、はっきり言っていい?」
渉は口を開いた。
「ん?」
「お前の小説、つまんないよ。」
「そんなはっきり言う!?」
「だってほんとだし。」
Dのわずかなプライドが玉砕される。
それでも何とか苦笑いを浮かべる。
「でもさ、評価してくれてる人もいるかもしれないじゃん。」
「じゃあ、お前、小説に感想もらったことあるか?」
「いや、見てない。」
「見ろよ。」
「だって怖いし。」
「結局自信ないんじゃん。」
「あるさ!」
「じゃあ見てみろよ。」
Dは少しムッとしながら過去の作品に寄せられた感想を見返した。が…
少ない。
同じ携帯小説サイトに投稿されている他の作品に比べ、
Dの小説には感想が圧倒的に少なかった。
「そんなばかな…」
「な?」
携帯画面を覗き込みながら渉が得意げに笑う。
「大体お前文章がひどすぎるよ。表現も一貫してないし、描写のパターンも少ないし。何よりストーリーが無茶苦茶すぎて読み手に全く伝わってないよ。」
「…そこまで言うかよ。」
「例えば最初に出てた感動ものだって。登場人物最初から最後までほとんど同じことしか言ってねーだろ。」
「確かに…」
「挙げ句ラスト付近でいきなり展開変えてるし。あれじゃ読者ついてけねーよ。もっと伏線を要所要所に入れないとさ。」
「それが出来たら苦労しねーよ」
渉に一方的にまくし立てられ、Dの自信は完全に崩壊していた。


続く

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