子供のセカイ。184
青い空間は、歪に掘られたトンネルのような構造になっていた。急に細くなって身を屈めねばならなくなったり、かと思えば城の広間のように広くなったりを繰り返した。しかし一本道なのは変わらない。どこもかしこも同じような色なので、奥行きが掴みづらかったが、なんとか壁に衝突することなく進んでいった。
進みながらジーナは、否応なしに浮かんでくる、かつて同じ領域にいた知り合いの姿を、なんとか頭の隅から追い払おうとしていた。
王子が余計な事を言うからだ。懸命に思い出さないようにしていたのに、巡る思考は、結局そこへ辿り着いてしまう。
(……奴がどんな状況にあろうが、今更、知ったこっちゃない。)
少年のように瞳をきらきらさせていた男の姿を思い出し、ジーナは軽く苛立つ気持ちを抑えながら、一つ小さく溜め息をついた。
しかし、美香や王子、耕太に、その存在の事を自ら話してしまったというのも事実だ。魔がさしたというか、なんというか。その男をここから助け出したいと思っているのか、違うのか、それさえ自分で判別がつかなかった。
「行き止まりだね。」
王子が呟く声にハッと我に帰ると、目と鼻の先に青い壁があった。
王子は一瞬目を丸くし、それから、なんとか込み上げてくる笑いを堪えようと閉じた唇を震わせた。
「ジーナ、今……」
「うるさい、考え事をしていたせいだ!」
ジーナは羞恥から思わず怒鳴ると、それでも可笑しそうに顔を背けて身をよじる王子の頭を強めに叩いた。
「……痛いよ、ジーナ。」
「いいから、ほら、箱を開けるぞ。箱の中身を使って道を切り拓くのが『労働』らしいからな。」
不機嫌に言い放ったジーナは、ガッシャンと派手に鉄の箱を床に落とすと、手早く留め金を外し始めた。王子も渋々しゃがみ込んでその様子を眺める。ゴロゴロと擦り寄ってくる猫の喉を軽く掻いてやっていると、横から驚いたように息を呑む気配が伝わった。
「これは……。」
「どうしたの?」
ジーナと王子は、箱の中をまじまじと覗き込んだ。そこにあったのは、手の平台の白いボールが二十個ほど。一見何の変哲もないただのゴム製のボールだったが、光の子供の想像物である二人は、そのボールが並々ならぬ力をはらんでいることにすぐに気づいた。
ボールの内には、まがまがしいほどに強力な想像の力が圧縮されていた。鉄の箱が用いられている理由がわかる。
進みながらジーナは、否応なしに浮かんでくる、かつて同じ領域にいた知り合いの姿を、なんとか頭の隅から追い払おうとしていた。
王子が余計な事を言うからだ。懸命に思い出さないようにしていたのに、巡る思考は、結局そこへ辿り着いてしまう。
(……奴がどんな状況にあろうが、今更、知ったこっちゃない。)
少年のように瞳をきらきらさせていた男の姿を思い出し、ジーナは軽く苛立つ気持ちを抑えながら、一つ小さく溜め息をついた。
しかし、美香や王子、耕太に、その存在の事を自ら話してしまったというのも事実だ。魔がさしたというか、なんというか。その男をここから助け出したいと思っているのか、違うのか、それさえ自分で判別がつかなかった。
「行き止まりだね。」
王子が呟く声にハッと我に帰ると、目と鼻の先に青い壁があった。
王子は一瞬目を丸くし、それから、なんとか込み上げてくる笑いを堪えようと閉じた唇を震わせた。
「ジーナ、今……」
「うるさい、考え事をしていたせいだ!」
ジーナは羞恥から思わず怒鳴ると、それでも可笑しそうに顔を背けて身をよじる王子の頭を強めに叩いた。
「……痛いよ、ジーナ。」
「いいから、ほら、箱を開けるぞ。箱の中身を使って道を切り拓くのが『労働』らしいからな。」
不機嫌に言い放ったジーナは、ガッシャンと派手に鉄の箱を床に落とすと、手早く留め金を外し始めた。王子も渋々しゃがみ込んでその様子を眺める。ゴロゴロと擦り寄ってくる猫の喉を軽く掻いてやっていると、横から驚いたように息を呑む気配が伝わった。
「これは……。」
「どうしたの?」
ジーナと王子は、箱の中をまじまじと覗き込んだ。そこにあったのは、手の平台の白いボールが二十個ほど。一見何の変哲もないただのゴム製のボールだったが、光の子供の想像物である二人は、そのボールが並々ならぬ力をはらんでいることにすぐに気づいた。
ボールの内には、まがまがしいほどに強力な想像の力が圧縮されていた。鉄の箱が用いられている理由がわかる。
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