欲望という名のゲーム?54
3
双眼鏡を持った鹿島を先頭に、喜久雄、友子、深雪の順で、ぞろぞろと明彦のいる林に向かった。
明彦は腕組みをして、木を見上げている。
そして時々振り返り、屋根の上にある風見鶏を見ている。
「はい、双眼鏡をお持ちしました」
鹿島が言うと、明彦はそれを引ったくるように取り、それで木の上のほうを丹念に見ている。
「何を見つけたのよ、兄さん」
深雪が言うと、明彦は皆を睨み付けて、
「いいか、この発見は俺に権利がある。
おまえ達は必要以上にここに近づくな!
分かったな!」
そう言って、また双眼鏡で何本もの木の上を見る。
しばらくしてから林の中に入り込み、そして今度は木の裏側を調べている。
明彦は鹿島が双眼鏡を取りに行っている間に、いろいろと考えていた。
まず『林の中』についてだが、『中』と言っても、それほど中であるはずがない。
なぜならこの林は深く、単に中と言ってもキリがないからだ。
それに雅則の言葉を借りれば、それは『O・B』になってしまう。
だからこの林の表面にある木だけが重要なはずだ。
そこで彼は何本かの木に焦点を絞り、調べる事にした。
次にあの最後の鳥の絵柄だが、これについては、いくつかの予想があった。
まず木の上に小さな鳥小屋のような物があるのではないか?
あるいはキツツキの穴のような物があるのではないか?
しかし、地上から肉眼で見た限りでは、発見できない。
どうしても枝や葉が邪魔で、下から見えない部分がある。
近くに寄ったり、遠くに離れたりしても、枝と葉が密集しているため、影になってしまう部分が出来てしまう。
その時、風が吹いてきた。
遠く屋根の上で、風見鶏の風車が、カラカラと音をたてて回る。
そして、枝がザワザワと揺れ、今まで見えなかった部分が見えた。
「あった!
あったぞ!
鹿島、梯子だ!
今度は梯子を持ってきてくれ」
しばらくして、鹿島が折り畳み式の梯子を持ってきた。
明彦は木に梯子をかけて登った。
そこにはスッポリ手が入る位の穴があった。
そしてその穴は、向こう側まで貫通している。
明彦は試しに穴を覗いた。
間違いない!
彼は確信を持った。
穴を通して、あの風見鶏が見事に真正面に見えたのだ。
あの鳥の絵柄は、これを暗示していたに違いない。
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