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誰がために、何がために?

[336]  萩原実衣  2010-07-15投稿
俺は、気力というものが自分に存在していない事に思わず、笑ってしまう。

間が悪い…。
麻耶が来た。

「元気にしてる??
空斗に何買ってきていいか解らなかったから、雑誌とあの店のシュークリーム!はい!」

「あ〜。ありがとう。」
「あんまり、感動してくれないのね。シュークリーム1時間並んだのになぁー。」

「ごめん。今は…あまり食べたくないんだ。」

麻耶は、俺を楽しませようと色々と話をしてくれていた。

俺は、しだいにそんな麻耶に苛立ちを覚えた。

「まや…。そろそろ独りにしてくれないか」

「えっ?久しぶりに逢ったのに…。30分て…。静かにしてるから、もう少し、側にいたい!」

「頼むから…独りにさせてくれ!」

俺は、始めて麻耶に大声をあげてしまった。
麻耶は、何も言わずに病室を出て行った。

(ごめん。)
心の中でそう叫びながらも自分を保つ事ができなかった。

これでいいんだ。

麻耶がこのまま離れて行っても仕方ない。

いや…?その方がいい。
「高嶋さん!検温ですよ!」
威勢のいい看護士長が入ってきた。
「今日は、士長さんが担当?」
「喜んでくれる?ってそんなにハズレくじ引いた顔しなくてもいいんじゃない?」

「いや…。違うんですよ。ちょっと彼女にあたってしまって…。」

士長は、血圧を計り終えると体温計を挟んだ。

「あらそう。高嶋さん後でくるわねぇ」

そう言いながら、あっさり病室をあとにした。

「まぁ、俺の愚痴聞いてる暇なんてないか。」

しばらくして、士長が来た。
「高嶋さん、体温は…?っと〜平熱ですね。」
そういうと士長は、椅子に腰かけた。
「さて、聞きましょう?彼女に当たったの?」
士長は、俺のために時間を作ってきた。

「何だか…元気に楽しそうに話す彼女が羨ましかったのと、どうにもならない自分にイライラして」

「そうか…。
ずーっと病院にいたら誰だってそうよ。でも、わかってるんでしょ?
悪い事したって!でないと、あんな顔しないわよ。今度、来たら一言謝ってあげれば大丈夫!」

「もう…来ないかもしれない」
「来るって!彼女看護士達にあなたが普通に食べられるか?何をすればいいのか?尋ねたわよ。だから…また来るわよ!」
麻耶と士長の明るい温かさに触れ少しだけ今を好きになった。

内緒で士長と食ったシュークリームがやけに美味かった。

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