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欲望という名のゲーム?56

[395]  矢口 沙緒  2010-07-15投稿



明彦はその大きな木をぐるりと回り、根を調べた。
あった!
一ヵ所だけ根が露出していて、それが二股に分かれていた。
しかもそこは林の内側、つまり雅則の言う『O・B』よりも内側になっている。
彼は陣地を死守する兵隊のように、その場所にどっかりと胡座をかき、腕組みをした。
「鹿島、今度はスコップだ。
スコップを持ってきてくれ」

鹿島がスコップを取って戻ってきた。
明彦はそれを受け取ると、今自分が座り込んでいた所を掘り始めた。
それを喜久雄達は黙って見ている。
四月とはいえ、天気もよく日差しも強い。
明彦はすぐに汗をかき出し、上着を脱ぎ捨てると、再び作業に戻った。
「明彦さん、その紙には何て書いてあったの?」
友子が言うと、明彦は紙を友子に手渡しながら、
「いいか!
これは俺に権利があるんだ。
その事だけは覚えておけ」
そう言って、また作業を始めた。
友子の受け取った紙を、鹿島を含めた四人が覗き込むようにして読む。
「決まりだな」
喜久雄が諦めたように言った。
「ねぇ、明彦兄さん。
穴を掘るの代わろか?」
深雪がおずおずと言うと、明彦は噛み付きそうな顔で深雪を睨む。
「余計な事を言うな!
いっさい手出しするんじゃないぞ!」
そう言って、また黙々と穴掘りを続ける。
その頃になって、孝子が来た。
「ねぇ、宝物見つかったの?」
のんきな口調で皆に聞いた。
「見つけたわよ、
こいつが!」
そう怒鳴った深雪の手が、わずかに震えていた。

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