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欲望という名のゲーム?65

[472]  矢口 沙緒  2010-07-19投稿



「トランプのクイーンが捕らわれている場所。
…それはトランプの箱の中」
「姉さん、鋭い!」
「でしょ。
でも問題はどの箱かって事よ。
そこで例の『ピカソ』よ。
この屋敷にあった絵は全部見たけど、ピカソの絵はなかった。
だけど、どこかにピカソの絵がなければ、おかしいじゃない。
それでまた、ひらめいたの。
この大量のトランプの中に、ピカソの絵のトランプがあるんじゃないかって。
もしあれば、それが目的の箱よ。
その中のクイーンに、きっと手掛かりがあると思うのよ」
「なかなか考えたじゃない。
それって面白い発想よね。
分かったわ。
さっそく見てみるね」
孝子は立ち上がり、壁一面に並べられているトランプを目で追い始めた。
とはいっても、並大抵の量ではない。
もしかしたら千を越えるかもしれないと思われるほど、トランプはあった。
大小はもちろん、円形の物、三角形の物、なんとも形容しがたい奇妙な形のもの。
孝子はそのひとつひとつを目で追っていた。


深雪と孝子のいる二号室の隣の一号室では、喜久雄と友子が白のクイーンを探し求めていた。
朝食後に、友子がある事に気がついたのだ。
「ねぇねぇ、あなた。
トランプのクイーンって、アルファベットの『Q』で表すわよね。
だとしたら、チェスのクイーンも『Q』で表すんじゃないかしら?」
と言い出した。
「そうかもしれないが、それがどうした?」
「クイーンがどこにあるかは分からないけど、でも『Q』なら三階の一号室にあるじゃない」
「三階の一号室に『Q』がある?
…あっ、ビリヤードのキューか!」
二人はその足で三階に駆け上がり、一号室に飛び込んだ。
しかし、必死の探索にもかかわらず、いまだに何の成果も得られなかった。


孝子はまだ三分の一のトランプも見終わってはいなかった。
「ねぇ、孝子。
トランプのクイーンって、隅の所に『Q』って書いてあるわよねぇ」
深雪はさっきまで孝子が使っていたトランプのクイーンをつまみ上げて言った。
「うん、書いてあるよ」
無数に並べられたトランプから目を離さずに、孝子が答える。


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