子供のセカイ。188
王子の肩から、ちょうど一匹のコウモリが飛び立つところだった。ジーナは憎しみをこめた目でコウモリを睨むと、素早く剣を突き上げ、そのコウモリを串刺しにした。ばた、ばた、と弱々しくばたついた後、やはりコウモリは霞がかったように、スッと消えてしまう。
そのまま剣を幾度か振るい、自分と王子に近寄っていたコウモリ達に斬りつけたが、一羽仕留めただけで後は避けられてしまった。
王子は胸ポケットから白いハンカチのようなものを取り出し、顔をしかめながら左肩の傷を覆うように縛る。すぐに布は赤く染まったが、王子は気にしていないような振りをして、再び猫に取り付くコウモリを払い始めた。
(……このままではまずいな。)
ジーナは背中を流れる焦燥感にぐっと歯を噛み締めた。自分はまだいい。むしろ戦闘を楽しんでいるくらいだ。しかしこのままでは、王子と猫がやられてしまう。
「お前、少しくらい我慢できるな?」
ジーナは初めて猫に声を掛けると、その頬の辺りを優しく撫ぜた。猫は賢そうな顔をふい、とジーナに向けると、王子と同じ金色の瞳で、じっとジーナを見つめる。
ニャオ、と鳴いた猫の声を返事と受け取り、ジーナは微かに笑った。
「お前は少し下がっていろ。」
そう言って王子の腕を引いて猫から離すと、ジーナは両手で剣を握り締めた。
王子は驚いて目を見開く。
「ジーナ、何を…!?」
「こうするしか、ない!」
ジーナは猫の体表面ギリギリのところに刃を当てると、勢いよく横に斬り払った。
斬られたコウモリがばさばさと大量に床に落ち、同時に猫も苦悶の声を上げた。当然、猫の背中もうっすらと切れていた。しかしジーナは気に留めず、剣に付着した茶色の毛の塊と血を払うと、王子を振り向いた。
「お前は床に落ちたコウモリにとどめをさせ。」
「う、うん。」
猫を気遣って王子の目は不安げに揺れたが、ジーナの固い表情を見て、なんとか頷いた。今はそんな状況ではないのだ。そう言われた気がして、王子も口元を引き締めると、早速床に落ちているコウモリ達に剣を振るい始めた。
「背中を借りるぞ。」
ジーナはそう言って猫の背に飛び乗り、そこからさらに跳ね上がって天井近くにいたコウモリを仕留めた。落ちてきたコウモリには王子が走り寄り、とどめをさす。
その作業を繰り返し、ようやくすべてのコウモリが消えた。
そのまま剣を幾度か振るい、自分と王子に近寄っていたコウモリ達に斬りつけたが、一羽仕留めただけで後は避けられてしまった。
王子は胸ポケットから白いハンカチのようなものを取り出し、顔をしかめながら左肩の傷を覆うように縛る。すぐに布は赤く染まったが、王子は気にしていないような振りをして、再び猫に取り付くコウモリを払い始めた。
(……このままではまずいな。)
ジーナは背中を流れる焦燥感にぐっと歯を噛み締めた。自分はまだいい。むしろ戦闘を楽しんでいるくらいだ。しかしこのままでは、王子と猫がやられてしまう。
「お前、少しくらい我慢できるな?」
ジーナは初めて猫に声を掛けると、その頬の辺りを優しく撫ぜた。猫は賢そうな顔をふい、とジーナに向けると、王子と同じ金色の瞳で、じっとジーナを見つめる。
ニャオ、と鳴いた猫の声を返事と受け取り、ジーナは微かに笑った。
「お前は少し下がっていろ。」
そう言って王子の腕を引いて猫から離すと、ジーナは両手で剣を握り締めた。
王子は驚いて目を見開く。
「ジーナ、何を…!?」
「こうするしか、ない!」
ジーナは猫の体表面ギリギリのところに刃を当てると、勢いよく横に斬り払った。
斬られたコウモリがばさばさと大量に床に落ち、同時に猫も苦悶の声を上げた。当然、猫の背中もうっすらと切れていた。しかしジーナは気に留めず、剣に付着した茶色の毛の塊と血を払うと、王子を振り向いた。
「お前は床に落ちたコウモリにとどめをさせ。」
「う、うん。」
猫を気遣って王子の目は不安げに揺れたが、ジーナの固い表情を見て、なんとか頷いた。今はそんな状況ではないのだ。そう言われた気がして、王子も口元を引き締めると、早速床に落ちているコウモリ達に剣を振るい始めた。
「背中を借りるぞ。」
ジーナはそう言って猫の背に飛び乗り、そこからさらに跳ね上がって天井近くにいたコウモリを仕留めた。落ちてきたコウモリには王子が走り寄り、とどめをさす。
その作業を繰り返し、ようやくすべてのコウモリが消えた。
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