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欲望という名のゲーム?70

[437]  矢口 沙緒  2010-07-22投稿



深雪は鎧をガチャガチャと解体し始めた。
それは思ったよりも複雑で、関節の部分などに小さな死角がたくさんあった。
腕の部分、足の部分、胴の部分、裏を返したり、手でコツコツとたたいたりもした。
その様子を四人は、遠巻きに見ている。
それ以上近付くと、深雪が大声で騒ぐからだ。
その根気強い作業を、彼女は一時間以上も続けた。
すでに鎧は見る影もなく、鉄くずのような有り様に変化していた。
そして、その作業に没頭する深雪を、ほかの者も根気強く見ていた。
最後に彼女は兜の調査を開始した。
まともな姿で残っている物は、この兜ひとつになってしまった。
兜の内張りを勝手に剥がし、外れる部品は全て外したが、やはり何もない。
…あたしは間違っていたのだろうか?
…この鎧は、何の関係もないのだろうか?
そんな不安が彼女の脳裏をかすめた。
鎧は完全に解体した。
しかし、何も出てこない。
深雪はもう一度鎧の残骸を見詰めた。
何か見落としてはいないか?
本当に調べ切ったのだろうか?
彼女は再びガチャガチャと鉄くずを引っ掻き回した。
そして、見付けた。
彼女が唯一調べていない物を。
ジャンヌ・ダルクの剣だ。
鎧にばかり気を取られて、つい剣の事を忘れていた。
柄を握ると、深雪は剣を鞘から一気に引き抜いた。
それを見た明彦が、大声で笑った。
続いて喜久雄と友子もクスクスと笑い出した。
その剣には、文字が書いてあった。


 ジャンヌ・ダルクは
 クイーンにあらず

 ナイトなり

 あしからず
         』

「何よ、これ!
馬鹿にしてるわ!」
深雪は顔を真っ赤にして叫ぶと、剣を思い切り壁に投げ付けた。
「おいおい、危ないぞ」
明彦がニヤニヤしながら、からかい気味に言った。
「ふん!
笑えばいいわ」
深雪は鎧の残骸を蹴飛ばすと、階段に向かって行った。
「あの…
これはどういたしましょう?」
鹿島が鉄くず化した鎧を指差して、階段を昇りかけた深雪に聞いた。
「あなたが片付けてちょうだい」
振り向きもしないでそう答えると、さっさと上に行ってしまった。

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