欲望という名のゲーム?72
「どうなさいました、孝子様?」
「やだ、左のコンタクトを落としちゃった」
「コンタクトを…
それはいけませんね。
さっそく探しましょう」
そう言って動こうとする鹿島を、孝子が手で制した。
「あっ!
動かないで!
踏んじゃったら、替えがないから。
大丈夫よ。
私のすぐ下に落ちていると思うから」
孝子はその場に両膝を着いて、手で床を撫で始めた。
鹿島はその様子をしばらく見ていたが、どうする事も出来ないのを悟って、自分の作業に戻った。
「あったわ!
あー、よかった。
眼鏡を持ってきてないから、これがなくなると困るのよね。
ちょっと部屋に戻って、コンタクトを洗浄してくるわね。
手伝うのは、そのあとね」
孝子は二階にあがり、そしてすぐ戻ってきた。
「よし、コンタクトOK!
準備出来ました!
で、何から手伝おうか?」
それが鎧の姿に戻るまで、たっぷりと二時間はかかった。
鹿島が残った部品はないかと点検する。
「いよいよ完成ね」
「はい。
あとはうまく立てばよいのですが…」
二人がかりで鎧を立たせる。
そして、二人同時に手を放した。
「出来た!
孝子様、本当に助かりました。
私一人では、どうしようかと…」
鹿島の言葉が終わらないうちに、鎧がグラッと傾いた。
二人はあわてて、それを押さえる。
「どこか変みたいね」
「そのようですね」
結局それから一時間余りも、二人はジャンヌ・ダルクと格闘するハメになった。
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