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懲役3年 14

[503]  デフレーター  2010-07-24投稿
「出所後に?」
俺は首を傾げた。
「はい…ここで得たもの、ここで学んだことを、本当に活かせるかどうか…出所後にこそ、試されるそうなのです。」
どういう意味なのだろう…ここでは多くのものを得ることができるし、必ず活かせるような人材になっているはずなのに…
翌日、俺や他の囚人達、そして高嶋は川上と佐々木を見送った。
「おめでとうございます。あなた方は無事、刑期を全うされました。今後の人生において多くの壁や困難が立ちはだかるでしょう。ですが、決して逃げてはいけません。ここでの経験を活かし、輝ける未来へ向け、思い切り羽ばたいてください。」
「ありがとうございます…」
川上も佐々木も表情は晴れやかだった。
「川上さん、佐々木さん…本当にお世話になりました。」
俺は2人に語りかけた。
「この先どんな困難が待っていようとも、必ず乗り越えて見せますよ。」
「ここでの経験が活かせるよう、頑張ります。」
2人が歩き去るのを、俺は深い思いで見送った。
俺が刑期を終えるまで、あと1年。

高嶋は俺に雑巾を手渡した。
「最後は、窓掃除です。未来を見通すための窓、丁寧に磨いて視界を良好にして、旅立ってください。」
「ありがとうございます。」
いよいよ最後だ…
ここに来てからの様々な思いが頭をよぎる。
始めはまるで違う世界に迷い込んだような、不思議な好奇心にかられていた。
それからすぐに不満が起こった。
毎日掃除だけして過ごす単調な日々や、独房の重苦しい空気への不満。
それがやがて、自分の手で何かを綺麗にすることの喜びへと変わった。
川上や佐々木、他にも様々な囚人との出会いがあった。
棚が磨かれるごとに、床が綺麗になるごとに、俺の心も、輝いていった。
小さな幸せの価値も見いだせた。
全ての思い出に感謝しながら、俺は毎日窓を磨き続けた。
そして…
「池田さん。いよいよ、最後ですね。」
出所の前日、高嶋が俺に雑巾を手渡した。
「はい。今まで…ありがとうございました。」
俺は深々と頭を下げた。
「立つ鳥あとを濁さず。最後はいつも以上に、心を込めて掃除してくださいね。」
高嶋は穏やかに微笑んだ。



続く

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