欲望という名のゲーム?75
深雪は見取り図を見ながら考えた。
雅則はテープの中で、しきりに『迷路』と言っていた。
そして、このスマイル君が正しい『迷路の入り口』を示すとも言っている。
彼女は以前に、屋敷の中にあるこれらを、見比べて歩いたことがある。
少しでも違いがあれば、それが何かの手掛かりになるだろうと考えたからだった。
しかしその結果は、全て同じ物だった。
という事は、これには道順をたどる矢印のような役目はないという事だ。
その様な使われ方をする物ではないのだ。
『迷路』という言葉が、いやに引っ掛かる。
彼女は立ち上がり、図書室へ向かった。
多分孝子は図書室だろう。
深雪は孝子の能力を高く評価していた。
あのトランプのクイーンは、行き止まりにぶつかってしまったが、しかし自分一人では、あそこまでも行き着かなかったに違いない。
あの子をうまく乗せる事が出来れば、きっと新しい進展があるはずだ。
図書室のドアを開けると、やはり孝子はいた。
隅の机に向かって、何かの本を読んでいる。
「ねぇ、何読んでるの?」
「あ、これ?
これは料理の本。
牧野さんの作るアイスクリームのデザートの作り方が書いてあるんじゃないかって、探してるの。
でも、これってプロ用の本だから、難しくって…」
「この図書室に迷路の本なんてあるのかな?」
「確かあったわよ。
あの奥の棚の、隅の方だと思ったけど」
孝子はその方向を指差した。
深雪は言われたあたりを探し、何冊かの迷路の本を持ってきた。
孝子の座っているデスクの隣に座ると、それを開く。
複雑な迷路の絵が書いてある。
目がチカチカするほどごちゃごちゃとしていて、深雪はそれを見ただけで頭が痛くなりそうだった。
しかし、この複雑な迷路も、今の自分達の状況よりはマシなはずだ。
なぜなら、その入り口だけはハッキリとしているからだ。
「ねぇ、孝子。
迷路をうまく抜ける方法ってあるの?」
そう聞かれて、孝子は迷路の本を覗き込む。
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