欲望という名のゲーム?76
「うーん、うまくかどうかは知らないけど、確実に抜ける方法ならあるわよ。
まず、これが実際の迷路だとするわね。
つまり、大きな広間の中を、板で細かく区切ったような、本当に人が歩けるような迷路。
その場合、入り口に入った時に左手を壁に当てるの。
そして、その左手を壁から絶対に離さないようにして歩けば、行き止まりをまた戻ったりして時間はかかるけど、必ず迷路から抜け出せるわ」
「ふぅん、ほかには?」
「そうね、この図のような時には…
ねぇ、何か書く物持ってる?」
深雪はポケットからボールペンを出し、孝子に渡した。
孝子はそれを受け取ると、複雑な迷路の図をボールペンで示した。
「これはかなり複雑だけど、でもよく見ると、明らかに行き止まりの所があるでしょ。
ほら、ここもそうだし、これもそう。
この行き止まりの道を、その道の入り口まで塗ってしまうのよ。
この道は、先が行き止まりだってハッキリしてるから、もう用はないのよ。
実際にやってみようか?」
そう言って孝子は、図の中の行き止まりを見付けては、その道の入り口まで、ボールペンで塗り潰していった。
それは、とても時間と手間のかかる作業だった。
深雪は辛抱強く、それを見守った。
一本の道が三股に分かれていて、その三股の先が全て行き止まりなら、最初の一本道も必要がなくなるわけだ。
迷路は複雑で、一本の道がいくつにも枝分かれしていて、その分かれた先が、またいくつかに分かれている。
だが孝子は投げ出す事もせず、根気よくそれを続けた。
やがてその迷路の図がほとんど黒で埋まる頃になって、孝子の言わんとする事が、目に見える形となって現れ始めた。
迷路の入り口から出口まで、一本の道が出来始めていたのだ。
「やっと出来たわ」
孝子が言った時には、入り口と出口を結ぶ、折れ曲がった一本の道以外は、全て黒で塗り潰されてしまっていた。
深雪はこの迷路脱出の方法に、何か重要な意味があるのを感じ取っていた。
「ありがとう、参考になったわ」
彼女はそう言い残して、図書室を出た。
そのまま深雪は自室に帰ると、寝室のベッドに横になり、またあの見取り図を取り出した。
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