欲望という名のゲーム?83
「このゲームさ。
もう五日もたつのに、何も分からないまんまだもんな。
三毛猫、ピカソ、それからスマイル君か、あれも分からんし」
「そうね。
それからレモンパイに書いてあった暗号も分かんないわね」
「結局、全然分からないってことだよな。
だいたい向いてないんだよな、こういうのにさ」
「じゃ、諦めるの?」
「ホームランを諦めて、確実なヒットっていうのはどうだ。
つまりさ、明彦か深雪が財産相続の権利書を見付けたら、僕達には一文も入らなくなるだろ。
だけど、この二人がもし失敗したら、少なくとも五千万円は手に入る。
参加賞とか言ってたよな、確か。
五千万あれば、今の家のローンを払っても、お釣りがくる。
そうだろ」
「それはそうだけど…
でも、具体的にどうするの?」
「あの二人の邪魔をする。
と言っても、まだ方法までは考えてないけどね。
…僕のこと、軽蔑するか?」
友子が目を伏せた。
「軽蔑はしないけど…」
落胆したような声で言った。
「でも、あなたらしいとは思うわ。
だって、いつもそうだもんね。
あなたは大きな夢は見ない人なのよ。
手の届く範囲の事を、確実にその手につかむだけの人よ。
でも遠くにある物は、ただ見ているだけ。
それを捕まえるために、人生を賭けることはしない人よ。
別にそれが悪い訳じゃないわよ。
むしろ堅実って言えるかもしれない。
でもさ、なんだか味気ないな。
きっとそんな人の奥さんって、毎日即席ラーメンを食べさせられているみたいだと思う。
いつも同じ味、毎日同じ味、そして、それが死ぬまで続くのね」
「じゃ、どうすればいい!
僕はどうせそんな男さ」
二人が言い争いかけた時、林の奥から三毛猫のパブロが歩いて来た。
堂々とした足取りで、ゆっくりと二人に近付いて来る。
そして、喜久雄と友子のことを見もしないで通り過ぎると、そのまま屋敷に向かって歩いて行った。
その後ろ姿を、友子が目で追っている。
「ねぇ、あの猫、付いてるわよ」
「付いてるって、なにが?」
「あれよ、あれ」
「あれって、なんだよ?
首輪か?」
「違うわよ、あれよ」
「だから、あれってなんだって聞いてるだろ。
はっきり言えよ」
「分かったわよ。
じゃ、はっきりいうわよ。
XXXXよ!」
「なんだ、あいつオスか」
喜久雄もパブロの後ろ姿を見た。
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