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欲望という名のゲーム?83

[462]  矢口 沙緒  2010-07-28投稿



「このゲームさ。
もう五日もたつのに、何も分からないまんまだもんな。
三毛猫、ピカソ、それからスマイル君か、あれも分からんし」
「そうね。
それからレモンパイに書いてあった暗号も分かんないわね」
「結局、全然分からないってことだよな。
だいたい向いてないんだよな、こういうのにさ」
「じゃ、諦めるの?」
「ホームランを諦めて、確実なヒットっていうのはどうだ。
つまりさ、明彦か深雪が財産相続の権利書を見付けたら、僕達には一文も入らなくなるだろ。
だけど、この二人がもし失敗したら、少なくとも五千万円は手に入る。
参加賞とか言ってたよな、確か。
五千万あれば、今の家のローンを払っても、お釣りがくる。
そうだろ」
「それはそうだけど…
でも、具体的にどうするの?」
「あの二人の邪魔をする。
と言っても、まだ方法までは考えてないけどね。
…僕のこと、軽蔑するか?」
友子が目を伏せた。
「軽蔑はしないけど…」
落胆したような声で言った。
「でも、あなたらしいとは思うわ。
だって、いつもそうだもんね。
あなたは大きな夢は見ない人なのよ。
手の届く範囲の事を、確実にその手につかむだけの人よ。
でも遠くにある物は、ただ見ているだけ。
それを捕まえるために、人生を賭けることはしない人よ。
別にそれが悪い訳じゃないわよ。
むしろ堅実って言えるかもしれない。
でもさ、なんだか味気ないな。
きっとそんな人の奥さんって、毎日即席ラーメンを食べさせられているみたいだと思う。
いつも同じ味、毎日同じ味、そして、それが死ぬまで続くのね」
「じゃ、どうすればいい!
僕はどうせそんな男さ」
二人が言い争いかけた時、林の奥から三毛猫のパブロが歩いて来た。
堂々とした足取りで、ゆっくりと二人に近付いて来る。
そして、喜久雄と友子のことを見もしないで通り過ぎると、そのまま屋敷に向かって歩いて行った。
その後ろ姿を、友子が目で追っている。
「ねぇ、あの猫、付いてるわよ」
「付いてるって、なにが?」
「あれよ、あれ」
「あれって、なんだよ?
首輪か?」
「違うわよ、あれよ」
「だから、あれってなんだって聞いてるだろ。
はっきり言えよ」
「分かったわよ。
じゃ、はっきりいうわよ。
XXXXよ!」
「なんだ、あいつオスか」
喜久雄もパブロの後ろ姿を見た。

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