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奈央と出会えたから。<409>

[388]  麻呂  2010-07-28投稿

『聖人君と木下さんも知ってのとおり、
うちのユカは気が強くてね。

今回の件でも、職員室で、森宮 ヒロキ君の頬をひっぱたいたそうで‥‥。

ハハハ‥誰に似たのだか。』



ワインを一口だけ口にしてから、


ユカのお父さんは更に続けた。



『近々、市議選に立候補しようと考えていたのだけれど‥‥
私は、今回の君達の勇姿に心を動かされたよ。

そんな事よりも、まだ私には、やりたい事が有った筈だと、気付かされたんだ。』



ワイングラスを持つ手が微かに震えていた。


酔っている筈はない。


だって、まだ1口しかグラスに口をつけていない筈。



『お父さん?!』



ユカが少し心配そうに視線を向ける。


そして、あたし達も。



『実はね、聖人君に奈央ちゃん。

ユカには、もう話してあるのだけれど、3学期いっぱいで、
私達家族は、道東にある私の実家へ引っ越す事になったんだ。』



お父さんの言葉に、ユカは納得した表情を浮かべたケド、


聖人とあたしにとっては、初めて聞く話で、


ただ驚く事しか出来なかった。



『私の実家は酪農をやっていてね、

若い頃、ちょっとした事がきっかけで父親と疎遠になり、

私は長男であったが、実家の酪農を継ぐ事は絶対に無いと思っていた。

本当は、酪農の仕事が大好きなのにな。
ずっと、自分の本当の気持ちに嘘をついて生きてきた。』



そんな。


ユカと離れ離れになってしまう?!


せっかく、また仲良くなれたのに。



『やりたい事やればいいじゃん。

オジサン、こんなに美味い料理だって食わしてくれんじゃん?!

こっちも才能あるんじゃね?!』



聖人ったら。


いくら小さな頃から知っているからって、そんな言い方はっっ!!



『いやだな。今日は、そんな話をする為にご招待したワケじゃないのに。

ごめんね。

お父さん、もうその話はNGね!!』



ユカが気を遣ってくれる。


そんな、


気を遣わなくていいよ、ユカ。


3学期いっぱいまで――


もう半年もないじゃん――


そんな事って――


そんなのって――



急すぎるよっっ!!

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