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欲望という名のゲーム?91

[494]  矢口 沙緒  2010-08-03投稿



四月二十日\r

この日は珍しく、ランチに全員が顔を揃えた。
先に済んだ喜久雄と友子が食堂を出た。
それに続いて、孝子が席を立つ。
そして、食堂を出ようとした時、明彦に呼び止められた。
「おい、孝子。
喜久雄と友子と三人で、今朝からビリヤードの部屋にいるが、何してるんだ?」
「遊んでるの。
ビリヤードで」
「遊んでる?
あの二人は宝探しをやめたのか?」
「うん。
もう、どうでもいいんですって。
それで朝からあの部屋で遊んでるの。
私もこれから行くところ。
三人共ビリヤードの正式なやり方は知らないけど、でもけっこう面白いよ。
兄さんも来る?」
「ふん。
金の欲しくない奴は、勝手に遊んでろ。
俺は諦めたりしないぞ」
明彦は椅子を蹴るようにして席を立った。

深雪は自室に戻ると、鏡の前に座った。
自分でも驚くほどやつれている。
あと二日しかない。
何かをしなければ…
早く探し出さなくては…
そんな思いが胸の奥底から湧き出てくる。
でも、いったい何をしたらいいの?
これ以上、どうすればいいの?
もう、あたしの手にはおえない。
でも、探さなくっちゃ。
そうしないと、あたしは元の生活に帰ることになる。
お客の機嫌をとり、お客に話を合わせ、おかしくもないのに笑い、その気もないのに、いかにも気があるフリをする。
足の先から髪の毛の一本一本まで、アルコールと嘘に染まった、あの生活に…
そこから出られる切符が、この屋敷の中にある。
すぐ手の届く所にあるはず。
でも、それをどうする事も出来ない。
このまま時間切れを待つの?
そんなのイヤ!
絶対に探し出す。
…でも、もう何をしたらいいのか分からない。
いったい、どうしたらいいのよ!
あたしは、どうしたらいいの?
鏡の中の女は、泣きそうなほど顔を歪めて、ヒステリックに首を左右に振った。


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