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幸運の女神-第二部 6

[458]  朝倉令  2006-08-31投稿


「よおっ! 康介やん。
その可愛いおネエちゃん、どこで拉致ったん?」


「アホぬかせ!ド突くでホンマ! ったく、仁も変わらんわっ」



小坂雛と連れ立って歩いていた石島康介に、ロクでもない挨拶をよこしてきたのはパンクバンド〈クワトロ〉のドラマー、中井仁であった。





「なァ、噂で聞ィたんやけど、お前らプロデューサーの霧島と何ぞコネあるんやて?」


「何や、その霧島っちゅうんは。 有名なんか?」


「あ、ヒナ知ってるーっ。
確かハートビーツのプロデュースやってた人だよね〜っ」

「ホンマかいな!」



ロック界に彗星のごとく現れ、バンドブームの火付け役となった《ハートビーツ》は日本のロックにまるで疎い康介でもさすがに知っている。



デビュー以来常に数十万枚のCDセールスを記録し続け、人気絶頂のさなか突如、解散。

半ば伝説になりつつあるバンドである。



「あのファイナルライブの挨拶は語りぐさになっとるで」


「ふふっ♪ 『俺、明日から大工やっから解散っ!』だったよねーっ?」


「アイツら、仁たちと変わらん位アホやったな」

「ほっとけコラッ!」



「……それにしてもなァ」


その『霧島』とか言う人物との繋がり(つながり)に思い当たるふしが全く無い康介であった。


彼は、暇な時にでも峠昭彦に尋ねる事に決め、雛と仁を伴いゲーセンに向かった。


康介にとり、遊ぶのは命から三番目に重大な事なのである。




…ちなみに、命の次に大切なのは彼女の小坂雛。






「あ、恵利花さァ」

「なぁに? 超カッコイイお兄様〜、あははは!」


「お前みたいなのを拾うバカはさ、… 俺しかいねーに決まってるよな」


「…ちょっとムカつく〜っ」

「お、おい!やめろって、その、…スリムビューティなお姫さま」



俺、倉沢諒司は、品川恵利花の左ストレートをかわしながら、自分の白々しいフォローについ吹き出してしまった。


(時期が来るまで、話さずに置くか……)



じゃれついてくるエリカの何気ない仕草が、無性に愛おしく思える。






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