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子供のセカイ。194

[387]  アンヌ  2010-08-04投稿
「それに、光の子供は、夜羽部隊によって倒されたのではありませんか?」
ねばつく喉を唾液で潤し、なんとかその言葉を押し出した途端、覇王の中の力が明らかに強まった。固い青色の目がハントから逸らされ、腹立たし気に床を睨む。
そのわずかな仕草を見て、ハントは打たれるような思いで悟った。
(……てことは、夜羽部隊は光の子供を仕留め損ねたのか!)
やるじゃねぇか!ハントは喜びに浮き立ちかけたが、唇を噛むことでなんとか堪えた。
「なるほど。それならますます、今、治安部隊を潰すことはできませんね。」
「……黙れ。」
覇王は唸るように言うと、剣を鞘に納めた。力がスッと消え、ハントは大きく息を吐く。
光の子供が死んでいるなら、治安部隊を用済みとして片付けることもできただろう。覇王と舞子の目標達成までにやることは限られていたし、脅威が存在しないなら、危うい味方などいない方がマシである。
しかし光の子供が生きているなら、わずかな兵力も削ぐわけにはいかない。治安部隊は強制労働施設を管理している大事な機関である。監視をつけてでも、その役割を続行させていた方が有益だ。
ハントに刃を向けたのも、ハント自ら再度忠誠を誓うように仕向けるための、ただの脅しだったのだろう。
「光の子供の仲間の二人は、捕らえたのだったな?」
覇王は気を取り直したように頭を振ると、滑らかな小麦色の長髪を肩から払い落とし、スタスタと執務机に近寄った。ハントは慌てて反対側から机の前へ回り込むと、先程と同じ位置に立つ。
「はい。どちらも強制労働施設で働かせております。」
「消せ。」
「は?」
大きな椅子に深々と腰掛けた覇王は、退屈そうに手を振った。
「光の子供が生きているなら、奴らと結束する可能性がある。それくらいわかるだろう?それとも、光の子供を応援している貴様には、そんな考えなど浮かばなかったか?」
「……は、はあ。ですが、奴らはなかなか使えます。計画の実行を早めたいのであれば、生かして働かせた方が有益だと思いますが……。」
ハントは自分でも驚いた。こんな、あの二人を庇うようなことなど、言うつもりではなかったのだ。そもそもハントは二人が労働する所などまだ見ていないし、使えるかどうかなどわかるはずがない。

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