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欲望という名のゲーム?94

[530]  矢口 沙緒  2010-08-07投稿



明彦と深雪がビリヤードの部屋に入ると、喜久雄と友子が、笑いながらビリヤードをしていた。
「やあ、兄さん。
一緒にやりませんか?」
「ビリヤードか。
まぁ、やってもいいが、俺はちょっと手強いぞ。
それに、小遣い程度でも賭けなきゃ、やる気がせん」
「まぁ、少しなら授業料だと思って賭けてもいいですがね」
「そうか。
じゃ、ワンゲーム10万というのはどうだ?」
「10万?
じ、冗談じゃない!」
「いや、いずれそういうゲームが出来るようになるかもしれないって事さ」
「いったい、何の話です?」
「全員が協力して、雅則の財産を見つけ出し、全員で分配する。
どうだ、乗らないか?」
「全員で分配?
よく分からないな」
「この宝探しは、一人の力では無理だ。
ましてや時間もない。
だが全員が協力すれば、発見できるかもしれない。
『盲人、象を触る』
というのを知っているか?
三人の盲人が象を触る。
一人は象の鼻を触り、象は細長い動物だと言う。
二人目は象の耳を触り、象は薄っぺらい幅広い動物だと言う。
三人目は象の足を触り、象は太い木のような動物だと言った。
人間はそれぞれ、物の見方が違う。
そして、自分の視野でしか、物を見る事が出来ない。
つまり、一人では全体の一部しか見えないんだ。
だが全員が協力して意見を交換すれば、きっと全体が見えてくるはずだ。
もうこれしか方法がない。
君達二人にも協力して欲しい」
「あなた、どうする?」
友子が心配そうに言う。
「頼む! 」
そう言って明彦が頭を下げた。
喜久雄は諦めたように笑った。
「兄さんに頭を下げられちゃ、断る訳にはいかないでしょう」

四人は明彦の部屋に集合した。
「兄さん、具体的にはどうしますか?」
「そうだな。
うまく権利書を見つけたら、この中の一人がとりあえず相続する。
そして、その者がその財産を、残りの者に均等に贈与するとしよう。
相続税や贈与税で、かなりの金額を引かれる事になるだろうが、それでも一人あたりで数億にはなるだろう。
少なくとも五千万よりはマシだ」
「誰が相続するのよ?」
「俺は喜久雄がいいと思う。
どうせ深雪は俺の事を信用しないだろうし、俺もお前じゃ不安だ」
「はっきり言うわね。
でも、妥当な判断ね」

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