欲望という名のゲーム?94
明彦と深雪がビリヤードの部屋に入ると、喜久雄と友子が、笑いながらビリヤードをしていた。
「やあ、兄さん。
一緒にやりませんか?」
「ビリヤードか。
まぁ、やってもいいが、俺はちょっと手強いぞ。
それに、小遣い程度でも賭けなきゃ、やる気がせん」
「まぁ、少しなら授業料だと思って賭けてもいいですがね」
「そうか。
じゃ、ワンゲーム10万というのはどうだ?」
「10万?
じ、冗談じゃない!」
「いや、いずれそういうゲームが出来るようになるかもしれないって事さ」
「いったい、何の話です?」
「全員が協力して、雅則の財産を見つけ出し、全員で分配する。
どうだ、乗らないか?」
「全員で分配?
よく分からないな」
「この宝探しは、一人の力では無理だ。
ましてや時間もない。
だが全員が協力すれば、発見できるかもしれない。
『盲人、象を触る』
というのを知っているか?
三人の盲人が象を触る。
一人は象の鼻を触り、象は細長い動物だと言う。
二人目は象の耳を触り、象は薄っぺらい幅広い動物だと言う。
三人目は象の足を触り、象は太い木のような動物だと言った。
人間はそれぞれ、物の見方が違う。
そして、自分の視野でしか、物を見る事が出来ない。
つまり、一人では全体の一部しか見えないんだ。
だが全員が協力して意見を交換すれば、きっと全体が見えてくるはずだ。
もうこれしか方法がない。
君達二人にも協力して欲しい」
「あなた、どうする?」
友子が心配そうに言う。
「頼む! 」
そう言って明彦が頭を下げた。
喜久雄は諦めたように笑った。
「兄さんに頭を下げられちゃ、断る訳にはいかないでしょう」
四人は明彦の部屋に集合した。
「兄さん、具体的にはどうしますか?」
「そうだな。
うまく権利書を見つけたら、この中の一人がとりあえず相続する。
そして、その者がその財産を、残りの者に均等に贈与するとしよう。
相続税や贈与税で、かなりの金額を引かれる事になるだろうが、それでも一人あたりで数億にはなるだろう。
少なくとも五千万よりはマシだ」
「誰が相続するのよ?」
「俺は喜久雄がいいと思う。
どうせ深雪は俺の事を信用しないだろうし、俺もお前じゃ不安だ」
「はっきり言うわね。
でも、妥当な判断ね」
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