拝啓 あなたへ 【No.2】
彼は窓の外を見ていた。
どこを見るとでもなく、ただ窓の外を見ていた。
賢そうな顔だった。
机の上には紙と鉛筆が置いてある。
紙の上には、何やら解読不能な文字や記号の羅列。
ほんの少し興味が湧いて、彼の後ろから覗き込んでみた。
見ても解るわけないのに。
彼は気付いていないのか、まだ外を見ている。
「この席、座っていい?」
彼の前の席を指差して訊いた。
反応はない。
「この席、座ってもいいですか?」
少し声を大きくして繰り返した。
彼はやっと気付いたようで、
「何?」
と真顔で返してきた。
ちょっとムッときた。
"何よ、それ?てか、逆ナンされてることくらい気付けって。"
そう思いながらも、少し恥ずかしくなってきた私もいて、
「この席…」
と言ったところで、不覚にも顔を赤らめてしまった。
「ああ、いいよ。別に。」
彼は続きの言葉を察知して、興味なさそうに答えた。
ちょっとショックだった。
こう見えても私は結構モテる。
正直、自分でもかなり可愛い方だと思う。
十七年生きてきて、フラれた事は一度もない。
街でもよくナンパされる。
事実、さっきも、歩いてて二度も誘われた。
もっとも、不釣り合いだと思ったから二回とも断ってやったが。
"絶対、私に夢中にさせてやる"
妙にムキになって、心にそう誓った。
その日は何もなく帰った。
あの後、彼は時々紙に何か書き込んでは、また外を眺めていた。
私もまた、そんな彼を眺めていた。
思慮深そうな顔だった。
何か思い詰めた顔でもあった。
なぜか私はそれが無性に心配だった。
帰ってから、メールアドレスを訊いていないことに気がついた。
次の日、私はもう一度、あのファーストフード店に出かけた。
朝から雨がシトシト降る、気持ちの悪い天気だった。
出かける時、母に
「あんた、まさかまた男遊びじゃないでしょうね。」
と言われた。
はは、鋭い…。
実は私、今までに何度か検挙されてます。
その度に母は私の前であからさまに大きな溜め息をつくんだ。
そう言えば、最近親に名前で呼ばれてない。
まぁ、どうせ高校中退の出来損ないだしね。
…なんて、そんな事を考えているうちに、目的の場所に到着した。
感想
- 39750: 改行するといいですよ♪読みやすくなりますから…☆ [2011-01-16]