欲望という名のゲーム?99
「じゃ、孝子。
おまえはこの黒猫が手掛かりだというのか?」
「そうね、手掛かりというよりも、道しるべじゃないかしら」
そう言って、彼女もシュバルツェ・カッツェを一本手に取った。
「では、仮に道しるべとして、その示す先はどこだ?」
「多分『ピカソ』だと思うわよ。
ただ問題は、この黒猫のワインとピカソの関係よね。
この黒猫に意味があるのかしら?」
「兄さん、ひとつ図書室に行って、このワインの事を調べてみたらどうでしょう。
確かあそこにはワインの本があったはずです」
「よし、そうしてみよう。
何か分かるかもしれん」
五人は地下室を出て、図書室へと向かった。
図書室に入った喜久雄は、奥の棚からワインの本を持ってきた。
厚くて大きな本で、言うなればワイン図鑑とも言うべき本だ。
それを机の上で広げる。
残りの者がその周りに輪になり、それを上から覗き込む。
「ええと、あれはドイツのワインで、ツェラーという場所の産ということはと…」
そう独り言のように言いながら、ページをめくる。
「あっ、あったあった、これだ。
えーと、シュバルツェ・カッツェとはドイツ語で黒猫のことで…
ああ、やっぱり黒猫だ。
それから…そのラベルに黒猫の絵が描かれているのが特徴で、さっぱりとして、軽く口当たりのよいワインなので、女性にも大変好まれる銘柄です」
「それだけか?」
「これだけです。
どうやらピカソとは関係がなさそうですね」
「そうだな。
やはり、『黒猫』に意味があるのかもしれんな。
仕方がない。
もうすぐ一時だ。
昼飯でも食いながら考えるか」
明彦の提案で、全員が食堂に向かった。
その途中で友子が、
「『黒猫』と『三毛猫』の関係って何かしら?」
と、ぽつりと言った。
それを横で聞いた喜久雄は、その一言に何か重要な意味があるのではないか、と感じていた。
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