拝啓 あなたへ 【No.7】
「夢があるんだ。」
といつか、彼は言っていた。
「学校をつくる夢。お金のない子どもも、親がいない子どもも、皆、学ぶチャンスは与えられるべきだから。誰も拒まない、そういう学校をつくりたい。」
私は黙って聞いていた。
彼と出会う前の私なら、きっと、
"夢なんか語っちゃって"
と冷ややかな目で見ていただろう。
けれど今は、ちょっと"かっこいい"と思う。
「でも、募金だけで学校を経営するには限界があると思うんだ。将来的にはやっぱり、学校が自立していけるようにしないと。それで、僕が考えてるのは………」
彼の話を聞きながら、私はふと思った。
"私と彼の関係って…?"
恋人?友達?それともただの知り合い?
次の日、私は思い切って訊いてみた。
「ねえ、私のこと、どう思ってる?」
「逆に、どう思われてると思ってる?」
予想だにしなかった返答だ。
「それは…」
私が戸惑っていると、一人の外国人がファーストフード店に入って来た。
彼は急に立ち上がった。
「ヘイ、フレッド!アィムグレイタフル……………」
何言ってるのか全然分からなかった。
彼はそのフレッドとかいう男の人と話し始めた。
時折、楽しそうに、時折、真剣に。
そして時折、懐かしそうに。
そこからはもう未知の領域。
最後にその人は、彼に何やら告げて意味ありげに私の方を見てから去っていった。
「ははは。」
と彼は照れ笑いをしていた。
その後、私は海外旅行に誘われた。費用はさっきの男の人が出してくれるらしい。
「でも…」
と、少しだけ躊躇ってから
「いいの?」
と、ちょっぴり嬉しそうに聞いた。
「もちろん。…て言っても、費用出すの僕じゃないんだけどね。」
と苦笑いする彼。
「…で、どこ行くんだっけ?」
「オーストラリア。知ってる?日本の南の方にある…」
「知ってるよ、それくらい。」
私は膨れっ面をした。
しばらくの沈黙の後、二人で同時に「ぷっ」と吹き出した。
「あぁ、そういえばね、私……」
「そうなんだ。」
「それでね、……」
その日は特別に会話が弾んだ。楽しくて楽しくて仕方がなかった。
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