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The Last Escape 第三章『兄妹』 4

[359]  エアロ  2010-08-15投稿
相変わらず、けたたましい音が辺り一面に響き渡っている。

「なるほど…確かに、チェーンソーの使用を禁止とは、誰も言ってないな…」
じり、じりと彼は後ろに下がっていったが、そのうち取り囲まれてしまった。

もう、駄目…
目を反らす事すら、怖くて出来なかった。

窮地に追い込まれた彼は、その時…

…?

今、アルファ…
何かした?

余りに速すぎて、よく見えなかった。が、
相手側には、何のダメージも与えていないらしい。
気付かれてもいないようだ。

彼がそんな事をしている間に、その男はチェーンソーを振り上げた!

私は目を閉じた上から、手で目を隠した。

人の肉が、斬れる音がするはずだったのに、カラン、と、音がした。


目を開けると、そこにはチェーンソーを奪い取り、追っ手を威嚇する、アルファの姿があった!!













「ああ、ダーツの矢だよ。」
「ダーツの、矢…?」
全員が逃げてしばらくした後の、彼の説明はこうだ。

まず、計算しやすくするため、センチメートル単位での端数を出さないように、相手との距離をとった。
次に、ダーツの矢が相手に刺さらず、しかも落下する矢がよく見える距離を保って矢が落ちてくるような放物線の角度を暗算で導き出し、その角度通りにダーツを投げた。

猫騙しというやつだ。

「なあんだ…びっくりするじゃない」
「言ったろ?俺はやられないって」

しかし…
余りにすご過ぎて、彼の何が凄いのかも良く解らない。

判断力?計算力?
それとも、腕力と俊敏性?
全部だろうか…

と、その時また、私の携帯が鳴った。
「要らなかったかも知れないわね、最終手段」
私は、笑いながら彼に携帯を渡した。

「ミス・リューリアック?どうだ、手筈は整ったのか?」
「偉そうに…ええ、済んだわよ」
そう言えば、彼らの言っていた『あれ』って、何なのだろう?
考える猶予も与えず、電話の向こう側で、リーナはこう続けた。
「貴方もあの馬鹿な父親も、ブタ箱送りになる事を祈ってるわ。…ミスター・アルファ・ドーランド」
電話はまた、ブツリと切れた。

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