欲望という名のゲーム?103
第七章
別れという名の
ゲームセット
1
シャトー・ムートンから抜いたコルク栓を手に持っていた友子が、急に大きな声を上げた。
「見て!
コルクに何か書いてある。
新しい手掛かりよ!」
友子が差し出したコルク栓の横の部分に、確かに文字が書かれている。
しかし、これは行き止まりを告げるメッセージではない。
ただ一行、次のように書かれていた。
『WQg3』
「これはあのレモンパイに書かれていたものと同種のものだ。
誰か、あのメモを持ってないか」
深雪がポケットからメモを取り出した。
「これよ。
いったい何なのかしら?」
『WBd5
WKa4
WBf2
WPg2
BRh2
BKh1』
「分からん。
分からんが、ひとつだけ言える。
このメモに書いてあるものだけでは、きっと不完全だったんだろう。
ここにもう一行、
『WQg3』
を加えて、はじめて完全な形になるんだ。
だからクイーンを救い出すまでは、絶対に先へは進めなくなっているんだ」
「それと、もうひとつ分かった事がありますよ」
喜久雄が言った。
「この奇妙なアルファベットと数字の羅列は、縦に読むんじゃない。
横に読むんですよ」
「じゃ、これでこの奇妙な暗号は、解けるはずなのね」
「そのはずだ。
とにかく一度上に行こう。
ここは少し寒い」
友子が水晶のクイーンを、深雪がコルク栓を持って、五人はまた食堂に戻ってきた。
テーブルの上に深雪の持っていたメモと、そのすぐ下に文字の書かれたコルク栓が置かれた。
すでに時間は三時半を過ぎていた。
明彦が立ち上がり、議長の役を務める。
「どうだ、誰かこれに関して気付いた事はないか?
なんでもいい、思い付いた事を言ってくれ」
深雪が手をあげた。
「雅則兄さんは、これが暗号じゃないって言い切っていたわよ。
でも、どこから見ても暗号にしか見えないわよね。
だって、まともには読めないんだから。
その点がすごく妙なのよね。
これが暗号じゃないなんて、とても理解出来ないわ」
友子が深雪に賛同した。
「深雪さんの言う通りよ。
もし暗号でないとしたら、このまま素直に読むしかないけど、それじゃ意味が分からないわ。
ねぇ、あなた。
どういう事かしら?」
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