欲望という名のゲーム?104
「うーん、最初のアルファベット三文字は、何かの略称かもしれないな。
例えば『JRA』が『日本中央競馬会』というような…」
「でも、こんな略称って、ひとつも聞いた事ないわよ」
友子が呆れて言った。
今度は孝子が手をあげた。
「ねぇ、これってさ、最初の一文字は『W』か『B』よね。
そのふたつだけだわ。何か意味があるのかしら?」
確かに孝子の言う通りなのだが、その意味は?
と尋ねられると、答えられる者はなかった。
「暗号じゃないとしたら、いったい何だろう?
暗号みたいに見えるが、そうじゃないものなんかあるのか?」
「そうですね…」
喜久雄が考えながら答える。
「例えば、さっき言ったような略称も、暗号とは違うと思うんです。
それから、物の名前。
機関車で『D51』というのがありました。
これは物の名前で、暗号ではありません。
あるいは、家電製品の品番なんかも、アルファベット+数字という形が多いですよね」
「物の名前かしら?」
深雪はもうひとつ賛成出来なかった。
「なんとなくピンとこないわね。
それにアルファベットの大文字と小文字があるっていうのも変よね。
なぜ最初のニ文字が大文字なのに、次に続く一文字は小文字なんだろう?
それにさ、雅則兄さんはクイーンを助け出した時に、この意味も分かるはずだって言ってたわよ。
それならば、このコルクに書いてある
『WQg3』
というのが解明の鍵なんじゃないかしら」
「そうだ、確かに雅則はそう言っていた。
ならば、この一行が重要というわけか。
この一行は、このメモに書かれたものの、最初にくっつくのか、あるいは最後に付くのか、それともどこかの間に入るのだろうか?」
「あるいは、どこでも構わないのか?」
喜久雄がそう言った時、奥から牧野が出てきた。
「そろそろ夕食のお時間です」
「おっと、もうそんな時間か。
よし、運んでくれ」
今夜は最後の夕食とあって、一段と豪華なメニューだった。
だが残念なことに、誰一人として、それを楽しみながら食べている者はいなかった。
皆、頭の中はあの奇妙な暗号めいたもので一杯だった。
孝子にアイスクリームのデザートが運ばれて来る頃には、時間はすでに八時に近かった。
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