欲望という名のゲーム?105
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「兄さん、そろそろ八時ですよ。
あと四時間しかありません」
「残念ね。
せっかくクイーンは見付けたのに…」
そう言って、友子がポケットから水晶のクイーンを出し、コルクの横に並べた。
その動作を見ていた明彦が、いきなり立ち上がり、コルクとクイーンを交互に見始めた。
「おい、みんな。
このコルクに書かれている
『WQg3』
だが、このニ文字目の『Q』はクイーンの『Q』じゃないのか?」
「クイーンの『Q』?」
全員が立ち上がり、小さなコルクを見る。
「でも、兄さん。
これがクイーンの『Q』だとしても、あとの『W』、『g』、『3』は何なんでしょうか?」
「ちょっと、さっき孝子が言ったじゃない」
深雪が興奮気味に言う。
「最初の一文字は『W』か『B』の二種類しかないって。
もしこれがクイーンの『Q』なら、答は簡単よ。
『W』はホワイト、『B』はブラックよ」
「でも、ニ文字目にも『B』が出てきますよ」
「分かった!」
孝子がそう言いながら、手を一回叩いた。
「こっちの『B』はビショップだわ。
『K』はキング、『P』はポーン、『R』はルーク。
全部チェスの駒の頭文字よ」
「じゃ、次に続く『d5』とか『a4』は?」
「これは駒の位置よ。
駒をチェス盤に置く位置。
ちょっと待ってて、今、図書室からチェスの本を取ってくるわ」
孝子は食堂を飛び出し、そしてすぐ戻って来た。
「ほら、この本を見て。
チェス盤の絵が書いてあって、縦の列に『1』から『8』まで、そして横の列には『a』から『h』まで、ひとマスごとに書いてあるでしょ。
しかも、この『a』から『h』までは、アルファベットの小文字よ。
チェスでは、盤上の駒の位置を表すときは、アルファベットの小文字と数字を使うのよ、きっと。
これは座標と同じなのよ。
例のメモの最初の一行目は『WBd5』。
つまり、白のビショップを『dの5』の位置へ」
「おい!
誰か三階に行って、チェスの駒とチェス盤を持ってこい!」
明彦の一声に、友子が食堂を走り出た。
「将棋と同じですね。
将棋も『6四金』とか『3六飛車』とか、やっぱり座標で表しますよ」
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