欲望という名のゲーム?108
明彦、深雪、友子の三人は、三階のチェスの部屋を探していた。
友子の考えが正しければ、それは特別なチェス盤であるはずだ。
チェス盤は呆れるほどあった。
よくもこれだけ、いろいろなタイプの盤を集めたものだと、感心させられてしまう。
だが、どれが特別かと言われると、なかなか結論が出ない。
「ねぇ、どれかしら?」
「分からんな。
どれも特別なような気がするし、どれも違うような気もする」
「この水晶のクイーンだけど…」
友子がポケットから、小さな水晶のクイーンを取り出す。
「この駒と対になる盤があるのかしら?」
「そうか!
それを探してみるか」
しかし、どの盤も水晶のクイーンに相応しいものはない。
なぜなら、この駒は特別に小さいからだった。
「ほかの部屋かな?」
「ねぇ、兄さん。
今、何時?」
「もうそろそろ十一時だ。
リミットまで、あと一時間と少ししかない。
しかもだ、どこが終わりかも見当がつかん。
うまくチェス盤が見付かって、そして喜久雄が詰チェスの答を出したとしても、まだその先があるかもしれないんだ。
これはギリギリだな。
ほかの部屋も探してみるか」
「無駄だと思うわ。
雅則兄さんは几帳面だから、チェスに関する物はこの部屋に全部集めてあるわよ。
時間がないなら、なおさらこの部屋を重点的に探すべきよ」
深雪の考えに、友子も賛成するように首を縦に振った。
「よし、三人でもう一度探そう。
そして、その中の疑わしい盤を、全部下に持っていってみるか」
「そうね。
でも、なんかシックリこないわね。
もっと特別なひとつだと思うわ。
一目瞭然でこれだって分かるような盤」
「この中にそんな物はない」
「じゃ、全部違うのかも」
深雪は部屋を見回しながら言った。
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