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欲望という名のゲーム?110

[575]  矢口 沙緒  2010-08-19投稿



五人はホールに集合した。
「兄さん、分かりました。
答は白のクイーンを
『eの5』です」
「よし、孝子。
この床をチェス盤に見立てて、『eの5』はどこだ?」
「チェス盤は、常に右下に白マスがくるように置くから、食堂の前から見るか、あるいは図書室の前から見るかによって、『eの5』の位置は違ってくるわ」
「あっ!
あれよ、きっと」
友子が思い出した。
「ほら、『白のプレイヤーは、知識の宝庫を背にすべし』って言ってたじゃない」
「そうか、図書室の前から見るのか。
よし、孝子。
図書室を背にすると、『eの5』はどこだ!」
「あそこ!」
孝子は、ほぼ中央の黒く四角いひとつを指差した。
「よし、みんなで調べろ!」
その時、鹿島が外から入って来た。
「車のエンジンはかけました。
いつでも出発できます」
「よし、そこに待機しててくれ」
「あの、あと三十分ですが…」
「分かってる!」
五人はその場所を必死に調べた。
「兄さん、ここ!」
深雪が示したのは、その四角の中央あたり。
そこに、ほんの直径が一センチ弱ほどの、円形の小さな浅いくぼみがあった。
「なるほど、これじゃ普段は気づかんな」
「これをどうするの?」
「兄さん、あとニ十分ですよ!」
しかし明彦には勝算があるらしい。
落ち着いた口調で言った。
「友子さん。
例のクイーンをここへ。
多分このくぼみにピッタリと合うはずだ」
友子はポケットからクイーンを取り出すと、そのくぼみの所に置いた。
確かにピッタリだった。
「そのまま、押し入れてみてくれ。
そのくぼみの底はバネ仕掛けか何かになっていて、クイーンで押せば沈んでいくはずだ。
雅則がクイーンは重要な鍵だと言っていたが、まさに鍵そのものだったんだ」
友子がクイーンの頭を押すと、それはすっぽりと中に入っていった。
そしてクイーンが全てその中に収まった時、何か金属的な音がガチャガチャと三回ほど鳴った。
多分、入れられた物が指や棒ではなく、水晶のクイーンである事を、その形で確認しているのであろう。
やがて床下から、低いモーター音のような音が聞こえ、その黒く四角い大理石の一枚板が、ゆっくりと斜めに開いていった。


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