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欲望という名のゲーム?113

[560]  矢口 沙緒  2010-08-22投稿



「さよならを言ったほうがいいかしら?」
孝子も寂しそうに言う。
「そうね。
一応、言っておいたほうがいいわね。
だって、きっと本当の別れになるから…」
深雪が優しい笑顔で孝子に言った。
「あばよ!
本当言うとよ、おまえ達と過ごしたこの七日間は、けっこう楽しかったぜ。
じゃあな!」
明彦は彼らしい別れを告げ、食堂を出た。
「グッドラック。
きっとまた、いい事もありますよ」
喜久雄が言った。
「私、さよならって言うのキライなの。
だからバイバイ。
素敵な人生をね」
そう言って、友子が手を振った。
そして二人も食堂を出た。
食堂には深雪と孝子の二人だけが残された。
「いいもんだよね。
妹がいるってさ」
深雪は少し照れたような笑顔で言った。
「なんかさ、ちょっとだけ温かくなったような気がするじゃない。
この辺がさ」
そう言って、豊かなバストの左側を右手で押さえた。
「また、会える?」
孝子が聞くと、深雪は首を横に振った。
「きっとあんたは自由に生きていけるけど、あたしは水の中でしか生きられないよ。
…でもさ、少しずつだけど、あんたに恥ずかしくない姉になるよ。
今はダメな姉さんだけどさ」
「そんな事ないよ」
孝子が下を向いたまま、消え入りそうな声で言った。
「今のままで素敵よ。
今のままが好きよ」
「ありがと…
じゃ、さよなら、孝子。
元気でね」
深雪は一度笑顔を作ったが、すぐにその顔が泣きそうに歪んだ。
そのとたん、彼女はクルリと背中を向けた。
そしてそのまま、食堂を出て行った。
食堂には孝子一人だけが残された。
「さよなら、みんな」
孝子がポツリと言った。
「やっぱり…
もう会えないのね」
そう言った彼女の瞳から、涙がこぼれた。


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