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欲望という名のゲーム?115

[572]  矢口 沙緒  2010-08-22投稿



深雪は煙草をくゆらしながら考えていた。
自分のこれからの生き方について考えていた。
昨日まではニ百八十億円が、生き方を変えてくれると信じていた。
しかし、今は違った。
自分の生き方を変えるものは、やはり自分でしかないのだ。
人の真似をする必要はない。
人に遠慮する必要もない。
自分らしく生きればそれでいい。
今までは、あまりにも物事に追われ過ぎていて、こんな当たり前の事にも気付かなかった。
重い荷物を肩から降ろしたような安堵感が、不思議な安らぎを彼女に与えていた。

孝子は窓の外を見ながら思い出していた。
牧野夫妻は屋敷を離れる時に、とても寂しそうだった。
あの人達は、これからどうするのだろう。
パブロは、ほかで暮らして幸せになれるのだろうか?
ほかの者は住み慣れた場所に帰って行くのに、牧野さんやパブロは、住み慣れた場所を追われるのだろうか?
たとえそれがどんな所でも、自分の居場所のある者は、それだけで幸せなのかもしれない…

バスは深い山道を、ガタガタと走って行った。


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