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ベースボール・ラプソディ No.45

[791]  水無月密  2010-08-25投稿
 八雲のいう全力の意味が、哲哉には解らなかった。
 百四十五キロのストレートは既に投げ、四隅にコントロールされていたにもかかわらず、石塚は空振りをしなかった。

 だが、哲哉はふと思う。
 要求すれば正確にコントロールされた百四十五キロちょうどの直球を投げてくる八雲には、まだ余力があるのではと。


「…一つ聞くが、お前、百四十五キロがマックスじゃないのか?」
「頑張りゃあと三キロ位だせるぞ」
 あっけらかんとした八雲に、哲哉は長嘆をついた。
「なら、なんで今まで投げなかったんだよっ!」
「おもいっきりだと、てっつぁんが構えた所に投げれる自信が、まだないんでね」
 口許を歪める八雲。

 八雲が全力投球しない理由が、自分の要求通りの球を常に投げるためだと知ると、哲哉は口許を緩めて彼の胸板をたたいた。
「それはそれで攻めようはあるさ。
 後は俺にまかせろ」
 寧ろ、配球内容をよまれている石塚には、その方が都合がいいと哲哉は考えた。



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