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欲望という名のゲーム?122

[573]  矢口 沙緒  2010-09-07投稿



「私はまだこの封筒の中を見てないけど、でも賭けてもいいわ。
この中にある権利書の有効期限は、少なくともあと一ヶ月はあるはずよ。
そうでしょ」
「な、何を馬鹿なことを!」
そう言った鹿島の顔色が変わった。
「それが貴方の切り札。
そして私の切り札でもあるのよ」
「いったい、何を根拠に言っているんだ!」
「私はまだカードを全部は開かないわよ。
カードを全部開いて手の内を見せる時は、ゲームの終わる時よ。
それまでは、お互いポーカーフェイスでいましょうね」
そう言って孝子は少し笑った。
鹿島の顔も、もとの無表情に戻る。
「そうそう、その顔よ。
じゃ、話をもとに戻して、もう少し説明しましょうね。
私は明彦兄さんの穴掘りの間に、なんとかクイーンを手に入れたわ。
その夜の夕食後に、あのレモンパイが出てきたのよね。
あれで条件は全て揃ったのよ。
もう迷う必要はないわ。
ただ指定された場所を探せばいいだけ」
「この屋敷のホールの床がチェス盤になっている事に、いつ気がつきました?」
「最初にホールに入った時よ。
だってこの屋敷の造りは変わってるじゃない。
二階の左右の廊下はホールに張り出していて、まるで上からホールの床を見るために造られているみたいだわ。
…そうなのよ。
この屋敷の前の持ち主、確かフランスの富豪だったかしら。
その人もきっとチェスが好きだったのね。
あの床をチェス盤にして、その上で人間が駒の代わりになって、チェスをやったのよ。
そんなパーティーを開いたんだと思うわ。
あの二階の左右の廊下は、言わば観戦席なのよ。
ホールで行われるチェスを、上から見るための観戦席よ。
この屋敷は、最初からそのように造られているのよ。
だから雅則兄さんも気に入って購入したのよね、きっと」
「確か孝子様は、あのレモンパイに焼き付けられたヒントを、書き留めはしなかったはずだ。
ほかの人達はメモを取っていたが、孝子様だけは、何もメモを取ってはいなかったはずだ」



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