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欲望という名のゲーム?124

[541]  矢口 沙緒  2010-09-09投稿



「結局その本の存在に気づいたのは、孝子様お一人のようでしたね」
「あの様子だと、そうみたいね。
あら、少し話が脱線しちゃったみたい。
さっきの続きに戻しましょうね。
私はプロブレムを解いて、権利書の大体の場所は分かった。
でも、喜久雄兄さん達の見張りが続いている限り、何も出来ない。
そんな時、深雪姉さんが鎧の分解を始めた。
そしてまた、残りの全員が見学してくれた。
鹿島さんも含めてね。
もちろん鎧はホールにあるから、まだ権利書を取り出す事は出来ない。
だから、その間に雅則兄さんの部屋に行って、権利書と入れ代わりに入れておくワープロ文を作っておいたの。
それからホールに降りて行くと、貴方が一人で鎧を組み立てようと悪戦苦闘していたの。
私はホールの床を調べて、あの小さいクイーンを収めるべきくぼみを発見したのよ」
「そうか、あのコンタクトレンズの時か…」
「私の視力は両目とも1・2よ。
乱視もなし。
だから眼鏡もコンタクトも持ってないわ」
「なんという嘘つき娘だ」
押し殺した声で言い、鹿島がまた一歩近付いた。
「あら、嘘つきはお互い様でしょ」
そう言って、孝子がまた一歩下がる。
「私が嘘を?
いったい、いつ?」
「そうやって、どこまでとぼけ切れるかしら?
でもいいわ。
だってこれは、二人だけのポーカーですからね。
最後までカードを伏せてゲームを続けましょ。
とにかく私は床を調べて、権利書のありかを確認した。
あとはそれを取り出すチャンスを待つだけ。
そして例の風見鶏騒動が起こった。
鹿島さんは喜久雄兄さん達と三階に行き、明彦兄さんと深雪姉さんは庭に出た。
牧野さん達まで庭に行ったわ。
私はワープロ文とスマイル君を持ってホールに降りて行った。
そして白のクイーンで床を開け、権利書を手に入れた。
代わりにワープロ文とスマイル君を入れておいたの。
これで白のクイーンはもう必要ないから、シャトー・ムートンのボトルに戻して、コルクをして、地下の元あった場所に戻しておいたの。
でも、地下から上がってきたら、ちょうど明彦兄さん達が庭から帰ってくる声が聞こえて、私はこの時まだ権利書を手に持っていたから、それをとっさに鎧の中に隠したのよ」



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