子供のセカイ。203
「さて、こんな辛気臭い部屋で話すのもなんだし、外に出ようぜ。」
二人は唖然としてラドラスを見上げ、それからジーナは首を傾けた。
「……そんなに自由に動いていいのか?ここは強制労働施設だと聞いたが。」
「大丈夫、大丈夫。俺には特権があるからな。」
ラドラスはそう言って朗らかに笑う。どこまで本気かわからないその台詞に、ジーナはまたあの、嫌な類いの不安を感じた。
ジーナがベッドから下り、ブーツを履くのを待ってから、三人は部屋を後にした。
そこはどうやら、地下へ向かうために通り抜けた廊下の一つに面している部屋らしかった。ドアを開けて外へ出ると、先程見かけた、深い爪痕のような傷が前の壁に走っているのが目に入った。
「……ここには、相当狂暴な怪物がいるらしいな。」
思わず問いかけるように呟くと、ラドラスは至極あっさりとした口調で答えた。
「ああ、その傷な。俺がつけた。」
王子も知らなかったらしく、ぎょっと目を見開き、ジーナはげんなりして溜め息をつく。最初にこの傷痕を見た時、少しでもラドラスの身を案じた自分が、馬鹿馬鹿しくなってしまった。
「こっちだ。」
ラドラスが先頭を進み、王子とジーナがそれに続いた。
狭く暗い廊下の途中で、何度か治安部隊の若者とすれ違うことがあったが、誰も三人を見咎めることはなかった。ただ、ちらりと視線だけを向け、顔を背けたまま行ってしまう。まるで自分には関係ないとでもいうように。
(やはり、様子がおかしいな。)
ジーナは日に焼けた若者の背中を見送りながら、一人静かに思案する。ラドラスの現在の立場が、まるで掴めない。彼は確かに支配者達に連れ去られ、ここへ放り込まれた囚人であるはずなのに、強制労働施設をまるで自分の庭であるかのように、堂々と歩き回っている。
それから少し行くと、最初に猫が待っていた玄関ホールに辿り着いた。ラドラスはためらいなく外へ向かって歩いていく。ジーナは一度周囲を見回し、誰も攻撃してくる人間がいないのを確認してから、王子に向かって頷いた。王子もまた確認を終え、頷き返すと、もう見えなくなってしまったラドラスの後を小走りに追いかけた。
ラドラスは中庭にいた。地下牢へ続く階段がある、四角い石造りの囲みに腰掛け、二人を待っていた。
「で、何が聞きたい?」
追いついた二人への唐突な問いに、王子は目を白黒させた。
二人は唖然としてラドラスを見上げ、それからジーナは首を傾けた。
「……そんなに自由に動いていいのか?ここは強制労働施設だと聞いたが。」
「大丈夫、大丈夫。俺には特権があるからな。」
ラドラスはそう言って朗らかに笑う。どこまで本気かわからないその台詞に、ジーナはまたあの、嫌な類いの不安を感じた。
ジーナがベッドから下り、ブーツを履くのを待ってから、三人は部屋を後にした。
そこはどうやら、地下へ向かうために通り抜けた廊下の一つに面している部屋らしかった。ドアを開けて外へ出ると、先程見かけた、深い爪痕のような傷が前の壁に走っているのが目に入った。
「……ここには、相当狂暴な怪物がいるらしいな。」
思わず問いかけるように呟くと、ラドラスは至極あっさりとした口調で答えた。
「ああ、その傷な。俺がつけた。」
王子も知らなかったらしく、ぎょっと目を見開き、ジーナはげんなりして溜め息をつく。最初にこの傷痕を見た時、少しでもラドラスの身を案じた自分が、馬鹿馬鹿しくなってしまった。
「こっちだ。」
ラドラスが先頭を進み、王子とジーナがそれに続いた。
狭く暗い廊下の途中で、何度か治安部隊の若者とすれ違うことがあったが、誰も三人を見咎めることはなかった。ただ、ちらりと視線だけを向け、顔を背けたまま行ってしまう。まるで自分には関係ないとでもいうように。
(やはり、様子がおかしいな。)
ジーナは日に焼けた若者の背中を見送りながら、一人静かに思案する。ラドラスの現在の立場が、まるで掴めない。彼は確かに支配者達に連れ去られ、ここへ放り込まれた囚人であるはずなのに、強制労働施設をまるで自分の庭であるかのように、堂々と歩き回っている。
それから少し行くと、最初に猫が待っていた玄関ホールに辿り着いた。ラドラスはためらいなく外へ向かって歩いていく。ジーナは一度周囲を見回し、誰も攻撃してくる人間がいないのを確認してから、王子に向かって頷いた。王子もまた確認を終え、頷き返すと、もう見えなくなってしまったラドラスの後を小走りに追いかけた。
ラドラスは中庭にいた。地下牢へ続く階段がある、四角い石造りの囲みに腰掛け、二人を待っていた。
「で、何が聞きたい?」
追いついた二人への唐突な問いに、王子は目を白黒させた。
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