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The Last Escape 第四章『凶暴性』 1

[426]  エアロ  2010-09-16投稿
「怖くない?」
あれから、また何日かが過ぎた。
もう、日数を数えることなど忘れてしまっていた。
全部で半分は、過ぎただろうか。
それでも、まだまだ怖い。いい加減、警察が動き出すはずだからだ。

アルファの答えは、毎回決まっていた。
「ああ、大丈夫。」
だが、今回は少し変化があった。
「でも…」
でも?
「…いや、何でもない」
問いただそうか迷った。
「…そう…?」
が、止めておいた。

立ち入った事を、これ以上訊くべきではない。

「…あと、十日」
「そんなに経ってた?」
「うん。…ちらっと携帯見たらね」
「…そっか」

そんな会話しか、しなくなっていた。
…会話があるだけマシか。

この頃、益々寒くなった。
公共の水道や川なんかで体は拭けるものの、服はめったに洗えないので、汚れ、ボロボロになっていた。

「服、洗いたいなあ…。ねえアルファ、そう思わ…な…」
時間が凍りついた。
ブルーの制服。こちらに走ってくる。

アルファは私の手を取り駆け出した。
「ちょ、ちょっと…」
警官を撒くためだろうが、無茶な走りかたをする。
転ばないよう付いていくのがやっとだった。

それでも、また警官が追ってくる。

「チッ…この、クソ野郎が…」
そう言うと、私を前に投げ飛ばして振り向いた。
そして彼は警官の背後にサッと入り、首を締めた。

一分とかからなかった、彼がその警官を、いわゆる『落とす』のには。

彼は倒れた警官に中指を立てた。
「ポリ公が…十年早いんだよ!!」

私は彼に促されてその場を離れた。

何故?
これまでの彼とは明らかに違う。
何だか、怖い…

肩に回された手が、やけに冷たく感じた。


「やっと、警察が動き始めたのね」
「言っただろ?奴ら、タイミングを見計らってたんだ。…畜生…なめやがって…蛇の生殺しだ、これじゃあ!!」
そう吠える彼を見て、私は彼に付いてきた事を、初めて後悔した。

彼の精神は、限界に近付いている。

いや、もう達してしまったのかも知れないが、どちらにしろ、正常な判断はすでにどこかに行ってしまった。

焦るのは解るけど…彼に、あるいは彼の過去に、一体何があったというのだろう?

彼の尋常ではない眼を見ると、そう思わざるを得なかった。

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