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The Last Escape 第四章『凶暴性』 2

[356]  エアロ(かなりの遅筆)  2010-09-26投稿
が、甘かった。

私はこの日、彼の暗黒面を知ってしまったのだ。
恐らく、彼も隠したがっていた、暗黒面…

凶暴な、もうひとりの彼を。


「アルファ…?」
「違う」
「…えっ…?」
彼は、髪を振り乱しながら恐ろしい形相で振り向いた。

「違う!!…俺は…俺は…」
「どうしたの?…何が違うの…?」
「アルファなんかじゃ…」
その時は、意味が分からなかった。

彼は私の口を塞ぐと、私を草の上に押し倒した。
「!?」
「なあソフィア…ここで何が起こっても…知っているのは俺達だけだ…そうだろ?」
「!!」
彼の言わんとする事はすぐにわかった。

そして、分からなくなった。
私は、何の為にこの人と…

だが、彼はあっさりと手を放した。
「冗談だ」
「・・・。」
冗談、で済むような話ではない。
「…ねえ、どうして?」
私は体を起こしながら訊いた。
「焦ってるのは分かるけど、少し落ち着いたほうが…」
「お前に何が分かる!?」
彼はそう叫んだ。

ドキッとした。
確かに、私は彼の事を何も知らない。

いきなり核心をつかれたような、そんな気がした。

「確かに…私は何も知らない…けど…」
「けど?」
「・・・。」
「そう…だよな。」
彼の目が急に優しくなったようだ。
「分かんないんだ。俺も…俺のこと。突然、取り返しのつかないような行動、取ったりしてさ」
「その傷痕も?」
「…いや?…これは、別」
「・・・。」
「…ごめん。冗談じゃ済まないよな、こんな事」
「そうよ、全くもう」
彼はただ項垂れ(うなだれ)ているだけだった。

彼が自分の過去や境遇を語りだしたのは、それからすぐの事だった。

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