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子供のセカイ。209

[393]  アンヌ  2010-10-07投稿
「お前なら、もう予想はついてるんだろ?」
ジーナは目を細めた。
「永遠の命、か。」
ラドラスは、静かに頷いた。
“子供のセカイ”に生まれ落ちた想像物は、それぞれ領域を手に入れ、ラディスパークの外に出る。領域は光の子供にその存在を忘れられることで、徐々に“子供のセカイ”の中心から離れていき、やがては消え失せるのが運命だ。
だからラドラス達は、“真セカイ”を支配し、光の子供を脅すことで、想像物の存在を再度『想像し直す』ように命令するつもりだろう。そうすれば“子供のセカイ”にある領域の場所を、ラディスパーク付近にまで戻すことができる。これを続けさせれば、消滅はやって来ない。すなわち、永遠に“子供のセカイ”に存在し続けることができる……。
ジーナは自分が空っぽになってしまったような気がした。何の感情も浮かんでこない。ただ、限りない虚しさの他には、何も。
ジーナは自分でも驚くほど静かな、落ち着いた声で言った。その声は自分が発しているような感じではなく、どこかとても遠い所から響いた。
「くだらない。お前は、そんなことに固執するような男ではなかったはずだ。」
「人は変わるんだぜ、ジーナ。もっとも、変わらないお前みたいな奴には、わからないとは思うけどな。」
二人は静かに睨み合った。ジーナは怒りを、ラドラスはからかいを含んだ目で。
「……さて、じゃあ俺はそろそろ行くよ。まだ午後の労働が残ってるしな。お前らは初日だし、今日の労働はもうないと思うぜ。適当に施設の中に戻っとけよ。」
ラドラスはジーナの肩を叩きながらそう言うと、王子にも軽く手を挙げて挨拶し、中庭から立ち去った。
二人は動かなかった。王子はジーナの手元を見つめた。手は、剣の柄にかけられていた。いつから掴んでいたのか、その手は血の気が失せたように白く、そしてわずかに震えていた。
「……斬れなかった。」
押し殺したような声に、王子は哀しい瞳で答えた。
「それでよかったんだよ。彼を倒したところで、舞子は止まらない。僕達がやらなきゃいけないことは同じだよ。美香ちゃんや耕太と合流して、舞子を止める。」
「……ああ。そうだな。」
ジーナはようやく柄から手を離すと、うつむけていた顔を上げ、空を見上げた。輝く太陽が大きな雲に呑み込まれて光を失っていくのを、無感動に眺めながら、ゆっくりと息を吐き出す。

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