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きみとあたしの恋愛事情1-8

[240]  佐村 真由  2010-10-10投稿
求めてはいけない。だけど、私の気持ちは収まらない。
「…ちょっとだけ、くっついててもいぃ??」
私はそっと、静かに求めるように、尚且つ気持ちを精一杯押し殺して、少しだけワガママを言った。
「…ん。チョットだけな。」
優しい声で秀人は答える。
私は秀人の腕の内側に入ると、秀人の胸に頬を寄せた。秀人の鼓動が時を刻むように鳴っている。
「ありがとぅ。」
私がそう言うと、秀人は何か言うわけでもなく、柔らかい表情で微笑んだ。
秀人の体温が鼓動が、全てが私の胸の奥底に秘めた想いを引きずり出して行く。
それと共に私は足を取られ秀人に沈んで行くのを感じる。
とてもこのままでは、理性的には居られないと悟り、秀人の胸から、そっと離れた。
何となく正気を取り戻した私は、急に恥ずかしくなり顔が熱くなる。
「さぁ〜て、あたしゎ満足じゃ〜。午前様だし帰るぞぉ〜!!」
気持ちをはぐらかす様に、私はいつものテンションで元気よく言った。
「元気だな〜。オメーゎ〜」
秀人の表情も伺えないまま私はハンドルを取り、車を秀人の家まで忙せた。

家を少し通り過ぎた所に停車すると、うたた寝をしてた秀人を揺り起こした。
「着いたよ?」
「…ん。あぁ、ありがとう。」
秀人が上着を羽織り、忘れ物がないか確認して車を降りる。
「またな!!」
笑顔で秀人が言う。家に向かって走って行く秀人をバックミラー越しに見送ると私は帰路に着くことにした。
家に帰り、そっと襖を開けると母と海司が気持ちよさそうに寝ている。
もう二時過ぎだ。
寝顔を覗き込み、冷えたパジャマに着替えると、私は布団の海司の隣に潜り込んだ。
布団の中は冷たかったが、体の火照りが現実に帰り、なお増したのか何なのか、少し生温い。
思い返すと、更に体が熱を帯びていく。
好きだと言う気持ちは前々から有ると知っていたハズなのに、今までは妻子持ちだからと押し殺していた部分に歯止めが効かなくなり、改めて秀人に焦がれる自分を思い知らされる。
秀人を想うと胸が苦しい、切ない。
胸の温もりが、鼓動が、私の体から離れない。
私は、なかなか寝付けないでいたが、知らぬ間に夢の中に墜ちていた。

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