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ベースボール・ラプソディ No.47

[706]  水無月密  2010-10-13投稿
 魂を吹き込まれた白球が光の矢と化し、大気を切り裂きながらばく進を始める。

 それがど真ん中に構えたミットへ迷わず直進してくると、哲哉は顔色を変えた。
 制球難を考慮したことが、裏目にでてしまったのである。

 心胆を寒からしめる哲哉。
 だが、それも杞憂に終わる。
 石塚ほどの打者がこの球を、バットを振ることすらできずに見逃してしまったのである。

 まさかのど真ん中に虚をつかれた石塚だったが、それ以上に八雲の速球は彼のバッティングセンスを上回っていた。
 それが、この結果をよんでいたのだ。


 試合の終結に球場全体が沸く中、電光掲示板に百四十七キロの表示がでると、観客達はどよめいていた。
 まだ一年生である八雲がみせた百五十キロへの可能性に、観客達は歓喜したのである。

 そして球場に、試合終了をつげるサイレンが鳴り響く。


 天を仰ぐ石塚。
 鳴り響くサイレンは試合の終了と同時に、彼らの早すぎる夏の終わりをつげていた。



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