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君へ

[628]  となりのトトりん  2010-10-19投稿
夏の終り
夕暮れに消えるように
貴方はなぜ
空の向こうへ
逝ってしまったのでしょう

まるで季節を旅するかのように
貴方はなぜ
気づかぬうちに
逝ってしまったのでしょう

そんな優し過ぎる気遣いが
とても貴方らしく哀しいのです

何もかも憶測の域を出ず
真実は誰にも
わからないのです

心など
決してわかり合えぬ
この世界で
想像など何の役に立つのでしょう

それでも
遺された者は
どうしようもなく
考えてしまうのです

貴方のことを思い出すたび
私は涙が止まらず
声が止まらず
嗚咽してしまうのです

あの日

あの時

貴方は私に
生きていくと
決意してくれたではないですか

思えば
何もかもが
不十分だったのですね

もっと貴方と話していれば
何かを変えられたのでしょうか

貴方のことを理解できずに
貴方のことを救えずに
貴方と共に暗闇を歩めずに

陽の光りも
月の明かりも
貴方の心には
届いていないことに
気付いてあげられなかったのです

どうか
一人で弔問したことを
お許し下さい

遺された人を思うと
連れ立っての弔いなどできず
誰の誘いも断るしか
出来なかったのです

それで遅くなったことも
私の我儘でしかないのです

それでも
一人で逢いたかったのです

誰のものではなく
私と貴方の心だけの会話

涙声で聞こえずとも

言い訳ひとつ
憎しみひとつ
哀しみひとつ

今更だとかは
思えずに
伝えたいのです

思い出幾つ
再会に幾つ
未来に幾つ

短過ぎる時に
今からだったのに
始まりだったのに

戻らぬ時と
戻らぬ命と
戻らぬ声が

私の目と耳から
離れないのです

責任など
それが命でしか
償えぬものではなかったのに

貴方のその優しさが
あまりにも痛すぎて
あまりにも哀しすぎて
帰らぬ貴方に
戻らぬ命に
ただ悔やむことしかできないのです

せめて
この世界で結ばれぬのなら
貴方の望む世界で
貴方の望むままに
誰にも遮られずに
幸せになれますように

せめて
貴方の逝く空の向こうで
愛する二人
幸せになれますように

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