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Kiss me!*3

[489]  玲唯  2010-10-24投稿


03.


「ユキ!」


 後ろから名前を呼ばれて振り返る。


 そこにいたのは、図書室で寝てたあいつだった。


 あいつは私の腕をつかんで強引に引き寄せると、私にキスをした。


 唇を離した時、あいつは私ににっこり笑いかける。


 私はビンタを食らわそうと手を振り上げたけど、手の甲に激痛が走った。


「痛っ!」


 痛みで目を覚ました私は、ベットのパイプにぶつけた手を擦りながら起き上がった。


「夢、か……」


 あいつとのキスが夢に出てくるなんて。最悪。


 しかもちゃんと唇が触れた感触もある。


 最悪だ、最悪だ!


 何であいつは私にキスしたんだろう。


 理由はどうでも、あれが私のファーストキス。


 本当、最悪。


 *


 学校に行ってあいつと会ったら気まずいなあ。


 あいつは昨日の事覚えてるか分かんないけど。いや、覚えてなくていいけどさ。


 それにしても、私のファーストキスはあんなのって凄い悲しい。


 ファーストキスはロマンチックなものがいいって思ってたし。


 忘れよう、忘れよう。無かったことにしよう。


 キスしてない、キスされてない。


「ちょっとユキ。いつまで寝てるの?」


 そう言いながらお母さんが部屋に入って来る。


「起きてるよ」

「ならいいんだけど。ご飯できてるからね」


 お母さんが部屋から出たのを確認して、私は準備を始めた。


 キスしてない、キスされてない。


 そう唱えながら。


 *


 学校に着いて教室に入ろうとしたとき、正面から友だちのナナミが歩いてきた。


 ナナミは私に気づくとすぐさま駆け寄ってくる。


「おはよ! いやー、丁度よかった」

「おはよ。丁度いいって、何が?」

「マサトの友だちが、ユキに用事あるって。ちょっとマサト、早く!」


 ナナミの数メートル後ろにはナナミの彼氏のマサトがいて、その友だちはマサトの影になっていて顔は見えなかった。


「そう急かすなよ」

「遅い人がいけないの!」

「で。用事ある友だちって?」


 私がそう聞くと、マサトの後ろからその友だちが姿を見せた。


 それは、あの図書室で寝てたあいつだった。


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