The Last Escape 第*章 1
「えーと…どれだったかしら…」
今にも崩れんばかりのたくさんの本が並んだ本棚。私はその中から目当てのファイルを選び出し、強く引っ張り出した。
「!!」
崩れる、そう思った時にはもう遅かった。
バサバサッ、ドサッと色々なものが落ちてきた。
その中に、目当てのファイルもあった。
紙の海の中でファイルを拾い上げ、中身を確認した。
良かった。中身はちゃんとある。
《ルーセント氏殺害その他の事件に関連する贈賄の記録》―割と雑な字で、そう書かれていた。
ふと、棚の上の写真に目をやる。
幼い頃の私が、ピンクのフレームの眼鏡を掛けた母に抱き締められている写真。二人とも、満面の笑顔だ。
「…お母さん」
あの頃の私は、まだ目が良かった。
今私が掛けている眼鏡は、死んだ母の形見だ。
優しくて、温かだった母との日々。それを思うと、父への…ドーランドへの憎しみが、フツフツと沸き上がってくる。
きっと、きっと私が復讐を果たすから。
…もうすぐ、あの男の全てが、終わるから…
「…待っててね…お母さん」
バスに揺られながら、私はソフィアの事を考えた。
尊敬していたお父さんを殺されて、どんな心地がしただろう。これまでわざとよそよそしくしていたのは、お父さんの事件について、知られたくなかったから。申し訳なく思っている。
また、ソフィアのお母さんは、独りぼっちの暮らし、どんなにか寂しいだろう。
アルファの事も考えた。
あの強欲なドーランドの元で、どんなに窮屈な思いをしただろう。
アルファを嫌いな訳ではない。
ただ、彼を見ると、ああ、私は見捨てられたんだなあって、…どうしても、どうしても素直になれない。
私がリューリアックと名乗るのを決めたのも、ドーランドを憎んでいるからだった。
…じき、新聞社に着く。
そろそろ降りる支度をしなきゃ。
今にも崩れんばかりのたくさんの本が並んだ本棚。私はその中から目当てのファイルを選び出し、強く引っ張り出した。
「!!」
崩れる、そう思った時にはもう遅かった。
バサバサッ、ドサッと色々なものが落ちてきた。
その中に、目当てのファイルもあった。
紙の海の中でファイルを拾い上げ、中身を確認した。
良かった。中身はちゃんとある。
《ルーセント氏殺害その他の事件に関連する贈賄の記録》―割と雑な字で、そう書かれていた。
ふと、棚の上の写真に目をやる。
幼い頃の私が、ピンクのフレームの眼鏡を掛けた母に抱き締められている写真。二人とも、満面の笑顔だ。
「…お母さん」
あの頃の私は、まだ目が良かった。
今私が掛けている眼鏡は、死んだ母の形見だ。
優しくて、温かだった母との日々。それを思うと、父への…ドーランドへの憎しみが、フツフツと沸き上がってくる。
きっと、きっと私が復讐を果たすから。
…もうすぐ、あの男の全てが、終わるから…
「…待っててね…お母さん」
バスに揺られながら、私はソフィアの事を考えた。
尊敬していたお父さんを殺されて、どんな心地がしただろう。これまでわざとよそよそしくしていたのは、お父さんの事件について、知られたくなかったから。申し訳なく思っている。
また、ソフィアのお母さんは、独りぼっちの暮らし、どんなにか寂しいだろう。
アルファの事も考えた。
あの強欲なドーランドの元で、どんなに窮屈な思いをしただろう。
アルファを嫌いな訳ではない。
ただ、彼を見ると、ああ、私は見捨てられたんだなあって、…どうしても、どうしても素直になれない。
私がリューリアックと名乗るのを決めたのも、ドーランドを憎んでいるからだった。
…じき、新聞社に着く。
そろそろ降りる支度をしなきゃ。
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