星空が見たい 第1話?
第1話 こころ?
潮風に吹かれながら、私は星空を眺めていた。
こうしていると、日常がウソのように思えてくる。
今すぐに家に帰ったら、自分の抱えている問題がすべてなくなっていて、すべてうまくいくのではないか。
そんな錯覚さえ起こさせる。
「幻だ。」
一度、長い瞬きをして、私は呟いた。
しばらくそうしていると、お腹が鳴った。
起きて、おにぎりを食べて、ウーロン茶で流し込むと、何とも言えない気分になった。
「やっぱ、塩おにぎりの方がいいなぁ。」
少し苦笑いをした。
「それは同感ですが、熊が来てしまうかもしれませんので、あまり懸命とは言えませんね。」
いきなり後ろから声をかけられて、私はあわてて後ろを振り返った。
「あんた、誰?」
会ったばかりの大人に敬語のひとつも使わない。
「これは、失礼しました。僕は、この辺に住んでいる、しがない中学教師です。」
男はニコッと笑って、ていねいな口調で答えた。
「どうせ、国語教師だろ。」
男はクスリと笑った。何か、ムカつく奴だ。
「よく間違われますが、担当科目は歴史です。」
「へぇ。歳は?」
暗くてよくわからないが、だいたい、30代に見える。
「36です。」
36で第一人称、“僕”って・・・。ダッサ。
しかも、ちゃっかりピクニックシートに座っている。
「今、第一人称が“僕”だなんて、ダサいって思ったでしょう?」
急に言い当てられて、私はビックリしてしまった。
こいつは、エスパーか!?
顔に出ていたのか、教師はまたニコッと笑って、説明してくれた。
「新任の頃や、一年生によく言われるもので。そうすると、クラス全体で目配せをしましてね。いやぁ、あれを見ると自分の中学の頃を思い出します!!」
そう言って、高らかに笑ってみせた。
変な奴だ。
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